再び多くの血が流される事態に心が痛む。ガザ全域に部隊が侵攻し、人道危機がますます深刻になった。いま一度、戦闘を休止し、本格的な停戦に結びつくよう国際社会にあらゆる努力を求めたい。
イスラエル軍とイスラム組織ハマスは、パレスチナ自治区ガザでの戦闘を再開した。戦闘休止はわずか7日間で終わった。
休止の条件であるハマスの人質解放が、イスラエルの期待通りに行われなかったとみられる。
再開後、イスラエル軍は南部にも地上部隊を侵攻させ「ガザ全域に地上作戦を拡大し続けている」としている。
北部に続き南部への侵攻で、ガザには安全な場所がない状況だ。
たった1日で100人以上の死者が出ることもあった。
南部には北部から多くの避難民が集中している。病院にも次々と患者が運ばれている。
南部にある国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の各施設で避難生活を送る住民は95万8千人に上った。
イスラエル軍は空爆も全域で強化し、住民の避難場所だった北部の二つの学校では、少なくとも50人が死亡した。
子どもを含め罪のない多くの民間人が命を落とす状況が繰り返されているのは、看過できない。
イスラエルの後ろ盾である米国は、過剰攻撃を避けるよう再三警告している。人道的観点で説得を続けてもらいたい。
戦闘休止期間中に支援物資は搬入されたが、十分に行き届いていない。再開後は搬入が中断しているとの報道もあり心配だ。
南部の病院を訪問した国連関係者は「水も衛生用品もない」と窮状を明かしている。
休止した7日間にハマスは外国人を含む人質計105人を解放したものの、まだ130人余が残る。イスラエルは拘束するパレスチナ人計240人を釈放した。
イスラエル政府内には、ハマス壊滅と残る人質の奪還のため戦闘が必要だとの考えが根強い。
一方、ハマスは戦闘が終結するまで人質の解放交渉は行わないとしている。11月上旬には、イランに財政支援を求めた。戦闘長期化を見据え、軍資金の確保を急いだとみられる。
双方とも強硬姿勢に変化が見られないのは残念だ。
イスラエル国内では死傷する兵士が増加し、政府に対する世論の圧力が強まっている。
ハマスに対しては人道危機に苦しむガザ住民から本格的な停戦を求める声が高まっている。
市民の声を双方はしっかり受け止めてほしい。
相互不信は強く、次の休止合意への交渉は難航必至だとされる。
だからこそ、仲介役のカタールをはじめ関係国は戦火がやむよう粘り強く働きかけねばならない。
