あらゆる企業や団体が狙われる恐れがある。人ごととせずに警戒を強め、被害防止に力を入れなければならない。

 トヨタ自動車が1日、国内工場の稼働を停止した。仕入れ先の企業がサイバー攻撃を受けてシステム障害に陥ったためだ。

 全14工場が対象で、約1万3千台の生産に影響した。仕入れ先のシステム障害による全工場の停止は初めてとみられる。

 トヨタは2日に全工場を再稼働させる予定だが、世界的自動車メーカーのサプライチェーン(供給網)に被害が及んだことを重く受け止める必要がある。

 トヨタは、仕入れ先企業をはじめ、国や捜査機関などと連携し、原因究明と再発防止策の構築を急いでほしい。

 被害防止に役立てるため、他の企業や自治体などへの積極的な情報提供が欠かせない。

 攻撃を受けたのは、トヨタの国内仕入れ先で樹脂部品などを手掛ける愛知県の会社だ。

 サーバーがウイルス感染し、脅迫メッセージの存在が確認された。身代金要求型のコンピューターウイルス「ランサムウエア」の可能性がある。

 ランサムウエア攻撃には、インターネット上での使用言語や攻撃手法などからロシア系ハッカーの関与が疑われる。

 なぜトヨタの仕入れ先が狙われたのか。どのようにして感染したのか。

 経済産業省などは、ウクライナ情勢に絡んだサイバー攻撃が激化する恐れがあるとして、国内企業に警戒と対策の強化を呼び掛けたばかりだった。

 今回はロシアによるウクライナ侵攻と関係があるのか。

 サイバー攻撃の手口は高度化、悪質化している。容疑者の特定は国際捜査の壁も立ちはだかり難しいとされるが、全容の解明に力を尽くしてほしい。

 ランサムウエアは国内外で猛威を振るっている。

 2021年、米最大級の石油パイプライン企業が攻撃を受け一時操業停止に追い込まれた。

 警察庁によると、ランサムウエアの被害報告は21年に33都道府県で146件に上る。

 トヨタの関連企業も21年にメキシコの工場が狙われた。過去にはホンダや光学機器大手のHOYAなども被害を受けた。

 今回のケースを受けて国は企業に対し、改めて対策強化を呼び掛けた。メールの添付ファイルを不用意に開かないことや、不審な動きを把握した場合は関係機関に速やかに相談することなどを求めている。

 対応が後手に回るほど、被害は膨らむ恐れがある。企業などは危機管理の徹底を肝に銘じてほしい。

 被害に遭った場合に経済活動や国民生活に影響が広がらないよう、官民が協力してサプライチェーンの強化などを講じる必要もある。

 政府は深刻化するサイバー犯罪に対応するため、警察庁に「サイバー警察局」を4月新設する方針だ。海外の関係機関との連携をスムーズにし、実効性ある組織にしてもらいたい。