学生の薬物事件を巡る混乱が、理事長らトップの内部抗争に発展し、大学への信頼が著しく低下した。大学は改善に努め、再建を急がねばならない。
日本大はアメリカンフットボール部の薬物事件で、再発防止策や学内体制の再構築といった改善計画を文部科学省に提出した。
改善計画には、法務専門知識を持つスタッフらを配置する理事長室や、コンプライアンス(法令順守)対応部署を設けることなどを盛り込んだ。
文科省は、日大に助言などを行う指導チームを年内にも立ち上げる。個別の大学改革を文科省が支援する体制を組むのは初めてだ。異例の事態であり、それだけ問題の根の深さがうかがえる。
林真理子理事長は会見し、混乱を謝罪した上で「断固たる決意で実行し、改革に全力を注ぐ」と述べた。
昨年夏に就任した林理事長は、元理事長の脱税事件などからのイメージ回復を期待されていた。しかし薬物事件発覚で一転、「お飾りの理事長」との非難も出た。手腕が問われる時だ。
事件の対応を巡っては、10月に第三者委員会が「ガバナンス(組織統治)が機能不全に陥った」とする報告書を公表した。
アメフト部の寮で大麻が見つかり、副学長の警視庁への報告が12日後だったことが「隠蔽(いんぺい)体質を疑わせ、信用を失墜させた最大の原因」と結論付けた。林理事長らの対応の甘さも批判した。
これを受け、日大は11月末の臨時理事会で、副学長の12月末の辞任と林理事長を減給50%(6カ月)とする処分などを決めた。
解せないのは、処分決定前に副学長が、辞任要求は林理事長によるパワハラだと提訴したことだ。内部対立が露見して、大学のイメージ低下を招いていることは言うまでもない。
学生のことを考慮せずに争いをしている場合ではないはずだ。
改善計画にアメフト部の廃部方針を明記しながら、継続審議になっていることも大きな問題だ。
無実の学生にも連帯責任を負わせることへの批判や、存続を求める署名活動を受け、多くの理事が廃部に反対し、結論を持ち越さざるを得なかった。
大学のガバナンスが未熟であることで、被害を受けるのは学生らだ。就職活動への影響を懸念する声もある。
未来ある学生たちに対して、正しい判断が求められる。
