国民の政治不信はかつてなく高まり、信頼回復は並大抵ではない。国会は引き続き「政治とカネ」問題を追及し、実態を明らかにしなくてはならない。

 臨時国会は13日閉幕した。政権中枢を直撃した自民党安倍派(清和政策研究会)の政治資金パーティー裏金問題を踏まえ、立憲民主党が岸田内閣に対する不信任決議案を衆院に提出した。

 安倍派の重鎮で、内閣の要である松野博一官房長官が答弁拒否を続けるなど、政権は不祥事の対応で機能不全に陥った。

 重要課題が山積する中で審議に影響したことは否定できない。不信任案に対して野党が賛成で一致したのは当然だ。

 不信任案は数で勝る与党の反対で否決されたが、政権が信任されたことを意味するものではない。岸田文雄首相をはじめ自民は、不信を招いた現状を猛省すべきだ。

 今国会は開会直後に、文部科学政務官が女性問題で辞任し、その後も公選法違反事件への関与で法務副大臣、税金滞納問題で財務副大臣が立て続けに更迭された。

 2カ月足らずの会期中に、これだけ多くの不祥事が起きること自体、異常なことだ。事態は深刻で、岸田政権の存続に関わる。

 疑惑が松野氏のほか西村康稔経済産業相、萩生田光一党政調会長ら政権幹部に広く及んだことで、重要課題が足踏みを余儀なくされる状況も看過できない。

 与党は防衛増税の開始時期を年内に決定するとしていたが、2024年に先送りした。物価高対策でガソリン税を軽減する「トリガー条項」の凍結解除に向けた協議は停滞している。

 萩生田氏は14日に政調会長の辞表を提出する。政調会長が交代すれば、政策決定手続きへの影響は回避できず、重要課題の先行きは一層不透明になる。

 不祥事によって国民生活に影響が生じることが憂慮される。

 今国会では、首相が示した低所得世帯向けの給付金など、物価高に対する国民の負担緩和策を盛り込んだ補正予算が成立した。

 防衛増税が控える中で、給付金と連動する住民税と所得税の定額減税の是非が問われたものの、政府の説明は納得感が乏しく、国民の理解は広がっていない。

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の被害者救済に向けた特例法は、包括的な財産保全策の導入が見送られたまま成立し、実効性に課題を残した。

 首相が衆院解散・総選挙のタイミングを探る中で打ち出した減税策は批判を浴び、不祥事もあって内閣支持率は低下の一途だ。

 13日の会見で、首相は信頼回復のため「火の玉となって党の先頭に立つ」と述べたが、そのための具体策は語らなかった。

 威勢のいい言葉だけで信頼を取り戻せるほど、国民は甘くない。