化石燃料依存からの脱却を打ち出したことは前進だ。各国は、地球温暖化対策を合意だけで終わらせず、実行に移さねばならない。
国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)は、気温上昇を産業革命前から1・5度に抑えるパリ協定の目標実現へ「化石燃料からの脱却」などを進めるとした成果文書を採択した。
ただ、成果文書の当初案にあった「化石燃料の段階的廃止」との文言は産油国の反発もあって削られた。これに島しょ国が反対し「脱却」との表現で合意に至った。
今回の合意は、石炭火力発電の段階的削減を打ち出した過去の合意より前進し、石油や天然ガスを含めた化石燃料全体に広げた。より踏み込んだ姿勢を表すものだ。
後押ししたのは、気温上昇に対する各国の強い危機感だ。
開幕前には今年が最も暑い年になり、平均気温が産業革命前を約1・4度上回り、パリ協定の目標に迫っていると発表されていた。
寒冷地の氷の融解が進み、海面上昇が加速し、大雨や干ばつ、山火事といった異常気象による災害も多くの国で起きている。
国連のグテレス事務総長が「全ての化石燃料を段階的に廃止し、エネルギー転換を加速させる必要がある」と訴えたのは当然だ。
成果文書は、現状ではパリ協定の目標は到底実現できないとし、温室効果ガス排出量を2019年と比べ30年に43%、35年に60%減らすことが必要だとしている。
各国が取る具体策として、化石燃料からの脱却を20年代に加速することや、排出削減対策が取られていない石炭火力発電施設の段階的削減への努力の加速を挙げた。
世界の再生可能エネルギーの発電能力を30年に3倍にするとの数値も初めて示した。
各国は、文書を踏まえて作る新たな排出削減目標で積極的な方針を示してもらいたい。
日本は、燃焼時に二酸化炭素(CO2)が出ないアンモニアなどを燃料に混ぜる技術も「対策」に当たるとの解釈で、石炭火力を今後も使う方針だ。
しかし、この方法は当面、ガス火力より排出が多い見込みだ。
世界の環境団体は「グリーンウォッシュ(見せかけの環境対応)だ」と批判している。
気になるのは、COP28に合わせて米国や日本など計23カ国が、脱炭素への貢献を理由に、50年までに世界の原発の発電能力を3倍に増やすと宣言したことだ。
原発は、計画から運転開始まで長い時間がかかり、建設コストも高い。「原発3倍」は、再生エネ導入を妨げることにもなりかねない選択だとの指摘もある。
再生エネを30年までに3倍にする誓約に123カ国が合意したのに比べ、広がりを欠いている。
日本は批判を受け止め、脱炭素に有効な取り組みを急ぐべきだ。
