販売する全車種を出荷停止とした異常な事態で、不正は他社ブランドにも及ぶ。顧客の信頼を損ねた責任は極めて重く、企業には誠意ある対応を求めたい。

 ダイハツ工業の品質不正を調査していた第三者委員会が報告書を公表し、不正があった車両は6車種から64車種に拡大した。

 不正にはトヨタ自動車など他社ブランドの車種も含まれる。ダイハツは国内外で販売する全ての車種の出荷を停止した。トヨタも一部車種で停止した。

 ダイハツはトヨタの完全子会社で、子会社の不正がグループ全体に波及する恐れがある。長期化すれば、販売台数世界一の業績にも影響しそうだ。

 大量生産に必要な「型式指定」の認証申請を巡る不正の報告を受け、国土交通省は21日、本社を立ち入り検査した。型式指定の取り消しなどの行政処分を検討する。

 第三者委の調査内容を精査し、他に不正行為はないか徹底的に調べてもらいたい。

 会社側は4月に海外向け4車種について、側面衝突試験の認証手続きで不正を確認、外部の専門家による第三者委を設置した。

 5月にも国内で販売する2車種で不正があったと発表した。

 今回は新たに書類の虚偽記載など174件の不正を確認した。トヨタをはじめマツダやSUBARU(スバル)から委託された相手先ブランドによる生産(OEM)分も含まれる。

 安全や環境に関する保安基準の試験で不正があったのは142件で、うち141件は保安基準上の問題はなかったとしている。

 国交省によると、残る1件でドアロックの解除や乗員救出で支障が生じる恐れがある。リコールなど必要な対応を急いでほしい。

 不正内容を巡って第三者委は、衝撃を与えてエアバッグの作動状況を確認する衝突試験で、タイマーにより自動で作動させる不正な加工があったなどと指摘した。

 最も古いものは1989年で、34年にもわたる不正に気付けなかったことには驚かされる。

 奥平総一郎社長は記者会見で謝罪し、「経営陣が現場の負担やつらさを把握せず、放置してしまった」と述べた。幹部の責任と現場任せの企業風土を認めた。

 低コスト・短期開発を強調する企業風土の中、現場はタイトな開発日程を強いられたとみられる。企業体質の改善が急がれる。

 トヨタの中嶋裕樹副社長も「(トヨタへの)供給車が増えたことが現場の負担を大きくした可能性がある」と反省した。

 トヨタグループでは昨年から日野自動車や豊田自動織機、愛知製鋼で品質を巡る不正が相次ぎ、全体のモラルが問われている。

 強い危機感を持って、ガバナンス(企業統治)とコンプライアンス(法令順守)を徹底すべきだ。