財政を立て直すには、支出を抑え、借金の膨張を止めねばならないが、借金頼みから抜け出せていない。このままでは財政運営が行き詰まる懸念がある。

 政府は22日、2024年度の予算案を閣議決定した。一般会計の歳出(支出)総額は112兆717億円で、過去2番目の規模となる。過去最大だった23年度当初からは約2兆3千億円減った。

 一見すると、新型コロナウイルス禍で膨張した歳出を「平時に戻していく」とする政府方針に沿ったように映る。だが実際は、突然の出費に備える予備費を前年度より4兆円減らしたことが大きい。

 社会保障費は37兆7193億円、防衛費は7兆9496億円で、いずれも過去最大だ。歳出の抑えが効いているとは言えない。

 岸田文雄首相は「物価高に負けない賃上げを実現する」とし、賃上げ促進策に重点を置いた。

 医師や看護師らの人件費などに相当する診療報酬の本体を引き上げる。公立小中学校の教職員給与に充てる国の負担金を増額し、保育士らの処遇も改善する。

 経済の好循環につながる対策になるかが試される。

 懸念されるのは、首相が看板政策とする防衛力強化や異次元の少子化対策で、財源確保がたなざらしにされていることだ。いずれも兆円単位の安定財源が必要で、歳出圧力は今後さらに高まる。

 防衛力強化では、当初年内としていた防衛増税の開始時期決定が先送りになった。少子化対策は社会保障分野の歳出改革などで財源をつくるが見通せず、高齢化の中で医療や介護で国の負担額を削減する改革は混迷が予想される。

 これでは借金に当たる国債に頼った財政運営が続きかねない。

 歳入(収入)は、柱となる税収を過去最大の69兆6080億円と見込むものの、歳出全てを賄うにはとても足りない。不足分は国債を発行して穴埋めする。歳入の3割を占める額だ。

 一方、歳出では、借金の返済と利払いに充てる国債費が、過去最大の27兆90億円に膨らみ、歳出全体の4分の1を占めている。

 日銀の金融政策修正を背景にした金利の上昇基調を受け、利払い費の算出に使う想定金利を17年ぶりに引き上げたことが響いた。

 借金体質のつけがいよいよ回ってきたと言えるだろう。

 国債残高は今年9月末時点で1027兆4千億円を超えている。金利が上昇すれば国債費が兆円単位で増え、財政をさらに圧迫していく可能性が濃厚だ。

 国債発行に頼る財政構造で、将来世代に重い負担がのしかかる状況は放置できない。

 国民の批判を避けたいばかりに財源論を後回しにし、当座の不足分を国債頼みでしのぐ財政運営を続けていては、政府は無責任のそしりを免れない。