民間人の犠牲に歯止めがかからず、国際社会の批判が高まる中でも、イスラエルは攻撃をやめようとしない。無差別な攻撃は即刻やめて停戦への道を進むべきだ。
パレスチナ自治区ガザ当局は、イスラエル軍とイスラム組織ハマスの10月7日以降の戦闘で、ガザ側の死者が2万人に達したとの声明を出した。うち子どもは8千人、女性は6200人を占める。
さらに破壊された建物のがれきの下敷きになるなどで、6700人が行方不明になっている。この7割も子どもや女性だ。
割合の高さから、戦闘の巻き添えになったとは言い難い。イスラエル軍が無差別に攻撃していることの表れと言えよう。
軍の報道官は「民間人を盾として利用するテロ組織との市街戦としては、この割合は極めて良い」と肯定した。許されない発言だ。
空爆に使った爆弾の半数近くが目標を外すリスクが高い無誘導弾との報道もあり、民間人の犠牲拡大につながった可能性がある。
国際人道法に違反し病院や難民キャンプの学校も攻撃する。国連職員の死者は百人を超え、メディア関係の約80人が命を落とした。
イスラエルの最大の後ろ盾である米バイデン大統領でさえ「無差別攻撃で国際社会の支持を失い始めている」と警告した。
国連総会は、人道目的の即時停戦と全ての人質解放を求める決議案を153カ国が賛成し採択した。10月下旬の「人道的休戦」決議よりも賛成国が増え、停戦圧力は国際的に強まっている。
国連安全保障理事会も人道支援強化を訴える決議を採択した。決議は11月に続き2回目だ。
しかし、イスラエルのネタニヤフ首相はハマス壊滅まで戦い続ける姿勢を崩していない。
痛ましいのは、イスラエル軍が自国の人質を誤射し3人が亡くなったことだ。戦闘が続く限り、こうした悲劇は再発しかねない。
3人が亡くなったことで、イスラエル国内では、人質の家族から「戦闘より早期解放を優先するべきだ」と、ハマスとの交渉を求める声が高まっている。
戦闘休止期間中に人質の一部が解放されたが、まだ130人前後が拘束されている。解放された人質が、劣悪な監禁生活や虐待などを証言した。家族が「一刻も猶予はない」と訴えるのも当然だ。
米紙が、ハマスが構築したトンネル網に、イスラエル軍が海水を流し込む「水攻め」を始めたと報じたことも気がかりだ。
ハマスの戦闘員を追い出す狙いだろうが、人質の拘束場所ともされる。家族の気持ちを思うといたたまれない。
イスラエルとハマス双方の不信感は強いものの、仲介国のカタールをはじめ国際社会は、両者が交渉のテーブルにつくよう不断の努力が求められる。
