年の瀬にカネを巡る問題で国会議員に次々と司直の手が伸びる事態は異常だ。政治への不信が極まり、先行きに危機感を覚える。
4月の東京都江東区長選を巡り東京地検特捜部は28日、公選法違反(買収など)の疑いで、衆院議員の柿沢未途容疑者と4人の秘書を逮捕した。
逮捕容疑は、木村弥生前区長を当選させるため、秘書らと共謀し、計約330万円の買収資金を提供するなどした疑いだ。
自民党系区議らに一律20万円の現金提供を申し出たとされる。
区長選期間中に木村氏に関する有料のインターネット広告を約38万円で掲載させた疑いもある。
買収や有料のネット広告掲載は選挙の公正さを害し、悪質だ。
逮捕前の任意聴取では「区長選と同日程で実施された区議選の陣中見舞い」と説明し、買収容疑を否認していたという。
捜査当局は丁寧に調べ、真相を明らかにしてもらいたい。
柿沢容疑者は岸田文雄政権の前法務副大臣だ。現職議員の逮捕は、洋上風力発電事業を巡る汚職事件で衆院議員秋本真利被告が9月に逮捕されたのに続く。
いずれも自民を離党したとはいえ、現職の逮捕が相次いだことを党は深刻に受け止めるべきだ。
一方、自民派閥の政治資金パーティーを巡る事件では27、28日に、安倍派(清和政策研究会)から高額の還流を受けた池田佳隆衆院議員、大野泰正参院議員の事務所などが家宅捜索された。
19日には安倍派と二階派(志帥会)の事務所が強制捜査を受け、その後、松野博一前官房長官をはじめ岸田政権の中枢を担っていた安倍派の幹部ら計5人が任意聴取を受けたことも判明した。
安倍派は本来のパーティー収入を記した資料とは別に、議員側への還流額を反映させた資料を作り、裏金を管理、運用していた。
焦点となる裏金の使い道については、「選挙応援の費用に充当した」と証言する議員もいる。表に出ない金を使った選挙では、当選した議員の正当性が揺らぐ。
特捜部は組織的な裏金づくりの全容と使途を解明してほしい。
政治資金パーティーは、政治献金が禁じられている人でもパーティー券を購入でき、20万円以下なら購入者が公表されない。政治資金規正法には、裏金をつくる抜け道が残っていると言えよう。
問題を受けて岸田首相は、改革に向けた党の新組織を設置するよう指示したものの、年内の発足には至らず、裏金問題に対する方向性は定まっていない。
捜査の推移により判明する原因、課題を見極めて具体策を検討すると表明したが、それでは対応が遅く、本気度が疑われる。
首相は党総裁として、規正法見直しや派閥の改革を率先しなくては、反省が全く伝わらない。
