きのうは仕事始めだった人も多いはずだ。ただ「今年もよろしく」とは言えても「おめでとう」とは素直に言いにくいような雰囲気もあったのではないか。大地震をはじめ、不穏な空気の中で新年が本格始動した

▼ただでさえ、仕事始めは気が重いという人もいるだろう。阿賀野市生まれの石塚友二は農民から俳人になった。〈越年の負目(おいめ)の仕事始めなる〉。昨年から続く作業は気が進まない。松の内からすまないが、正直な気持ちなんだ-。素朴な日常を凝視した彼らしい句だ

▼昨年度、うつ病などの精神障害を発症し労災認定された人は4年連続で増えた。パワハラや過労死が絶えない。精神を病んで休職した小中学校などの教員も過去最多だ。迎春とはいえ、すっくと前を向けない社会人が増えているのが現実なのだ

▼年明けに届いた年賀状を眺めていると、昇り竜の姿も力なく見えた。震度7に見舞われた能登では亡くなった人の確認が増え続けている。本県でも家屋の被害が多数出た。ライフラインの復旧にもまだ時間がかかりそうだ

▼まだ家は片付いていない。修繕もどうしよう。そんな心配や不安を抱えながら、会社や事業所で初仕事に臨んだ人もいただろう。新年の華やぎとともに、気分一新で再スタートというわけにはなかなかいかない

▼「大丈夫でしたか」「大変でしたね」。そんな声が、あちこちで聞こえてきた仕事始めだった。相手の目を見つめ、心の絆を確かめ合う。この年初は、そんな気遣いの大切さを心したい。

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