自民党派閥の裏金問題は、現職国会議員の刑事責任が問われる事態に発展した。あしき慣習の全容解明に、徹底捜査を求めたい。

 自民安倍派(清和政策研究会)の政治資金パーティーを巡る事件で、東京地検特捜部は7日、政治資金規正法違反の疑いで、衆院議員の池田佳隆容疑者と政策秘書を逮捕した。

 2018年以降の5年間で派閥から計4826万円の還流を受けたのに、その額を除いた虚偽の収入を資金管理団体の政治資金収支報告書に記入した疑いがある。

 特捜部は、池田容疑者が、資金管理団体の会計責任者を務める政策秘書と共謀したと判断した。

 逮捕の理由を「具体的な罪証隠滅の恐れが大きいと判断した」と説明している。

 規正法違反容疑で現職国会議員が逮捕されるのは異例だ。悪質性が高いとみているのだろう。

 安倍派の裏金は5年間で6億円近くに上る可能性が指摘されている。池田容疑者側は所属議員99人の中でも高額だった。

 特捜部は先月27日に、還流を受けた疑いがある議員の関係先として初めて、池田容疑者の議員会館事務所などを家宅捜索した。

 池田容疑者は疑惑発覚後の先月8日付で、20~22年に派閥から計約3千万円の寄付があったとして収支報告書を訂正し、使途の報告義務がない政策活動費と認識していたと文書で釈明した。

 だが、政策活動費は派閥を仲介せず、一般的に幹部にしか支給されない。釈明には無理がある。

 同じく家宅捜索を受けた大野泰正参院議員を含め、特捜部は還流の背景や、党幹部らの関与について明らかにしてもらいたい。

 池田容疑者は、典型的な「文教族」で、文部科学副大臣や党の文部科学副部会長などを務めた。

 疑惑が報じられてからは一度も公の場に姿を見せなかった。支援者が「あまりにひどい」「裏切りだ」と憤るのは当然だ。

 岸田文雄首相は池田容疑者の除名処分を決定したと説明したが、除名しても党には疑惑への説明責任があると自覚すべきだ。

 裏金事件では、特捜部が二階派(志帥会)会長を務める二階俊博元幹事長らを任意で聴取したことが分かった。複数議員の事務所がパーティー券の販売ノルマ超過分を手元にプールしていた。

 首相は今週、政治刷新本部を発足させるが、政治資金規正法改正には「与野党で議論した上で結論を得ていかなければならない」とするだけだ。これでは当事者意識がうかがえない。

 政権発足から2年余りで、党に所属した議員の逮捕や起訴が4人に上る由々しき事態だ。

 能登半島地震が発生し、国民の不安感は強い。政治への国民の信頼が欠かせない時であると、首相は肝に銘じなければならない。