風邪と並び「万病のもと」と言われるのが冷えである。体が冷えると免疫力が低下するという。手足が温まりにくい冷え性に悩む人は多い。末端の冷えはさまざまな不調につながるが、体の中心部の温度が下がるとさらに深刻な状態に陥る。低体温症である

▼寒さなどで体熱が失われ、内臓などの深部体温が35度以下になると全身に障害が出る。進行すれば意識障害を起こすなどして死に至ることもある。低体温症で死亡することを凍死とも呼ぶ

▼凍死と言うと登山中に遭難したり、水難事故でずぶぬれになったまま長時間過ごしたりするようなケースをイメージしやすい。しかし、実際には屋内で発生することが多いらしい。寒い室内で過ごしていた高齢者らが自覚症状のないまま低体温症になることがあるという

▼低体温症で亡くなる人は熱中症の死亡者よりも多い。熱中症の危険性はよく指摘されるが、低体温症のリスクは十分には知られていない。高齢者は体温の調節機能が衰えがちだ。近頃は燃料代の値上がりのため、暖房費を節約しようと室温が低いままで過ごし、体調を崩す人もいるという

▼危機的な状況にさらされているのが能登半島地震で被災した人々だ。20年前の中越地震の際、現地の取材拠点で寝袋にくるまった夜を思い出す。床から冷気がはい上がってきた。体の熱が奪われるのを感じた

▼あの時は10月だった。厳寒期の今は、どれほどの寒さだろう。被災地に燃料と食料をもっと。十分に届けられない現状が悔しい。

朗読日報抄とは?