社会の中で孤立しているとか孤独だと感じる人が増えている。政府が2022年に実施した調査では、孤独感が「しばしば・常にある」「時々ある」「たまにある」と答えた人は合わせて約40%に上り、初めて調査した前年の約36%から増加した

▼人は一人では生きていけないという。多くの場合、暮らしは誰かの支えがあって成り立つ。周囲との関係が断ち切られると、悩みを相談できなくなったり、必要な医療が受けられなくなったりする。人のつながりこそが社会といえる

▼人の集まりである集落や自治体も同様ではないか。人やモノ、情報によって互いにつながる。その関係が絶たれれば、たちまち立ち往生してしまう。能登半島地震では道路などのインフラが途絶し、依然として多くの地域が孤立している

▼今回の地震では被災地へのルートが限られ、いわば被災地全体が孤立状態にある。周辺地域とのつながりを、一刻も早く取り戻したい。きょうを生き抜き、再び立ち上がるための後押しを届けたい

▼ある避難所からのテレビ中継で、ホワイトボードにこんな言葉を見つけた。「Not Alone!」。「一人じゃない」という意味の英語である。少しずつだが支援は届いている-。被災者が自身にこう言い聞かせ、勇気を振り絞ろうとしているのか

▼20年前の中越地震でも、多くの地域が孤立した。悲嘆に暮れながら、それでも歯を食いしばり、暮らしを取り戻した人たちがいた。能登に呼びかける。あなたは一人じゃない。

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