政治への国民の信頼を取り戻さねばならない。長年にわたるあしき慣習から脱却し、自民党を変える決意が求められる。
しかし、派閥領袖(りょうしゅう)や安倍派(清和政策研究会)の議員が多数メンバーに含まれるのでは、抜本的な改革ができるのか疑問だ。
自民党は11日、派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、総裁直属機関として設置した政治刷新本部の初会合を開いた。
本部長を務める岸田文雄首相は「国民の信頼回復、民主主義を守るため、党自らが変わらなければならない」と力説した。
今月中の中間とりまとめを目指すという。言葉通りの変革につながる内容となるか、首相のリーダーシップが問われる。
裏金問題を巡っては7日に東京地検特捜部が、多額の還流を受けた安倍派の衆院議員で、自民党を除名された池田佳隆容疑者を政治資金規正法違反容疑で逮捕した。
西村康稔前経済産業相ら安倍派幹部や、二階派(志帥会)会長の二階俊博元幹事長らも聴取を受け、捜査の動向が注目される。
国民はかつてなく厳しい目を向けている。刷新本部は危機感を持ち、議論を尽くさねばならない。
メンバーは幹事長や総務会長ら党七役のほか、若手議員らも加えた38人で構成する。
首相は党を挙げた改革を演出したいのだろうが、党として事件の詳細を明らかにせずに、何をどう改革するのか本気度が疑われる。
議論の焦点となるのは、「ザル法」と指摘される政治資金規正法の改正に踏み込むかどうかだ。
パーティー券購入時の団体・個人の公開基準を現行の「20万円超」から引き下げることや、全手続きの銀行振り込みの導入、違反者への厳罰化といった案が浮上しているという。
収支の透明性向上や罰則強化などで実効性がある対策を打ち出せるか注視されるが、党内には慎重論がある。
党側から幹部らに配られる政策活動費の使途公表も透明化には欠かせないだろう。
裏金作りの温床となり、自民国会議員の8割が所属する派閥の在り方も大きな論点だ。
初会合で、最高顧問に就任した無派閥の菅義偉前首相は派閥解消を強調した。一方、出席者からは研さんの場として派閥の必要論も出された。
党内には資金面や人事などで影響力を持つ派閥への期待感も根強く、議論の先行きは不透明だ。
改革をどう導き、国民が納得のいく方向性を示せるか、首相の責任は重い。
立憲民主党も政治改革実行本部を設置し、必要な法案の国会提出を目指す。
政治不信の払拭に、野党も本気で議論し、国会全体で改革を成し遂げねばならない。
