五輪と並ぶ「平和の祭典」が、混迷の中で幕を開け、競技が始まった。
ロシアのウクライナ侵攻を受けて、ロシアとベラルーシの選手の出場が土壇場で認められなくなる異例の事態となった。
理不尽な戦争によって大勢の命が奪われている。平和への願いを忘れてはならない。選手だけでなく、国際社会が改めて大会の原点に思いを寄せる時だ。
4日の北京冬季パラリンピック開会式では、入場行進にロシアとベラルーシの選手の姿はなかった。
国際パラリンピック委員会(IPC)が3日、国名などを使わない「中立」の立場で個人資格の出場を認めるとした前日の決定を一転撤回したためだ。
IPCは両国選手除外の理由を「他国の複数のチームや選手が大会に参加しないと表明し、大会存続の危機だった」と説明した。参加容認で選手村の状況が不穏になり、選手の安全が懸念されることも挙げた。
両国選手の出場可否を巡っては、IPCは当初「政治的中立」を強調し、選手は「侵略者ではない」との考えだった。
それを180度変え、選手や関係者を混乱させたIPCの責任は大きい。
4年に1度の夢を絶たれた両国選手は、さぞ無念だろう。
「スポーツと政治」は切り離すべきではあるが、ウクライナでは戦禍が広がっている。
武力行使を続ける国の選手との試合を拒否する他国選手が多いのも理解できる。IPCの最終判断はやむを得まい。
こうした状況をつくった元凶はロシアのプーチン大統領にある。ベラルーシはロシアの侵攻を支援している。
国連で昨年、五輪・パラリンピック期間中の休戦決議が採択された際、ロシアは共同提案国だった。だが、五輪が終わるやウクライナに侵攻して破った。
平和の祭典を踏みにじる暴挙は断じて容認できない。
ロシアとベラルーシの選手には、ロシアの即時撤退を求める国際社会と連帯し、声を上げることを期待したい。
このままではパラアスリートを含む両国選手が多くの競技で国際大会への出場が認められない状況が続く。
国際オリンピック委員会(IOC)は先月末、全ての国際競技連盟に両国選手の国際大会からの除外を勧告した。
国際サッカー連盟はワールドカップ予選プレーオフでのロシア出場を禁じた。
選手が復帰できるように、国際社会が結束し、ロシアに強い圧力を掛けなければならない。
北京冬季パラリンピックは13日までの10日間、6競技78種目で争われる。
戦禍の母国を出国して試合に臨むウクライナ選手には温かい声援を送りたい。
県勢は5大会連続出場の出来島桃子選手(新発田市役所)がに挑む。5日はバイアスロン女子立位6キロで14位となった。他の種目でも出場を予定しており、力走に期待したい。
