ユーチューブから流れてきた、ある動画から目が離せなくなった。包帯をした子どもがベッドに横たわっている。松葉づえも見える。マイケル・ジャクソンの曲「ヒール・ザ・ワールド」のミュージックビデオだった
▼タイトルを和訳すると「世界を癒やそう」。戦火や人権侵害が絶えない状況を憂い、こう呼びかける。〈世界を癒やそう。よりよい場所にしよう。君のために。私のために〉。発表は1992年だが、今の世界に向けて作られたように感じた
▼その頃は湾岸戦争やユーゴスラビア紛争で多くの血が流れていた。およそ30年を経ても、このビデオのような状況がウクライナやパレスチナ自治区ガザで起きている。現実に、多くの子どもが傷ついている
▼ガザでは戦闘が始まって100日が過ぎた。保健当局によると、15日時点のガザ側の死者は2万4100人。このうち1万人以上が子どもという見方がある。現地で暮らす子の約1%にも上るようだ。1日平均100人の小さな命が犠牲になっているという。言葉を失う
▼「ヒール・ザ・ワールド」は〈君が命を大切に思えば世界はもっと良くなる〉と訴える。理想論に過ぎないだろうか。そうは思いたくない。残虐な行為を許さないという思いを国際社会と共有したい
▼世界は癒やしを求めている。それは、多くの人が傷ついていることを意味する。能登には不自由な生活に耐える地震被災者がいる。命を大切に。そんな当然のことを改めて思う。〈君のために。私のために〉