子育てに王道はない。手探りを繰り返す毎日が、やがてわが家の子育てになっていく。パパたちが歩んできた「パパの細道」をのぞかせてもらう対談企画。2ndシーズンのテーマは、妊娠中のママと歩む「プレパパ期」。今回はどんな細道が待っているだろうか。

横田 孝優
コピーライター。10歳(男)・7歳(男)・7歳(女)の3児のパパ。企業理念の開発やホームページの文章制作などを手がけるほか、新潟日報asshにて2024年1月まで子育てコラムを連載。 https://ztdn.net/

黒崎 貴之さん
BSN新潟放送のアナウンサー。ニュース、バラエティー、スポーツ中継など、さまざまなテレビ・ラジオ番組で活躍中。2021年に同局のアナウンサー、三石佳那さんと結婚。22年に長女が誕生した。趣味はゴルフと競馬。

あ、これじゃなかった

横田 名前はどうやって決めましたか?

黒崎 最初は男女どちらの場合も想定して考えていました。途中で女の子だと分かり、候補の中から「これだ!」という名前が決まったんです。生まれてからもその名前で呼んでいました。ところが、いざ出生届を出そうという時になって、最初に却下した名前が気になってきたんです。それは妻が考えてくれたものでした。子どもの顔を見ているうちにその名前がいいなと思うようになったんです。

横田 生まれる前に決めていた名前があっても、実際に顔を見たら「あ、これじゃなかった」となるケースはよくあるそうです。ベビーフォトをたくさん撮っているカメラマンさんが教えてくれました。

黒崎 かっこいいタイプの名前を考えていたんですが、実際に顔を見たらほわっとしていたので、優しい雰囲気の名前が似合うなと思いました。

うれしいことへの準備

横田 だんだんと予定日が近づいてくるわけですが、具体的な出産の流れについても動画投稿サイトで予習したのでしょうか?

黒崎 そうですね。私はずっと産婦人科医が立ち会うと思っていたんですが、それは助産師さんの仕事で、医師が来るのは最後の最後だけなんですよね。びっくりしました。

横田 奥さまはもともと実家のある長野県で出産の予定でしたが、重いつわりで入院となり、里帰りが早くなったんですよね。お話を伺っていると、黒崎さんは一人の時間がたっぷりあったからこそ、待ち遠しさやもどかしさが調べる行為につながったのかなと思いました。

黒崎 確かに私は調べるくらいしかできなかったんですが、子どもの誕生といううれしいことへの準備だったので楽しんでいました。

奥さまが撮影した、家族旅行での1枚。パパの腕の中ですっかり安心した様子の娘さん。休みの日に家族でお出かけや旅行をするのが最近の楽しみだという

横田 里帰り出産の準備は整っていたんですか?

黒崎 妻には身軽な状態で行ってもらって、私が荷物をまとめて届けていましたね。2週間に1回くらいのペースで通っていたので、完全に道を覚えてカーナビを使わなくなりました。

最高のプレゼント

黒崎 出産のプレゼントとして、妻にアルバムを贈ったんです。妊娠中の妻の写真や、子どものエコー写真を時系列に並べました。「大変だったね」「がんばったね」と、妊娠中のストーリーを振り返ることができるようにメッセージも添えて。最後に、生まれてきたわが子と撮った家族写真を貼りました。

横田 すてきですね。奥さまは喜んだんじゃないですか。

黒崎 今までのプレゼントで一番喜んでくれました。

出産前にプレゼントした手作りアルバム。出産後、空けておいた最後のページに、生まれてきたわが子との写真を貼って完成させた。出産をがんばってくれた妻への感謝を込めた思い出の品

横田 読者のプレパパたちはぜひまねしたほうがいいですね。奥さまから、やってもらってうれしかったことや、逆にやってほしかったことなどは聞いていますか?

黒崎 つわりで妻の具合が悪くなり始めた頃、私が冷凍ギョーザを作って1人で食べたんです。そのにおいが完全に駄目だったと言っていました。ギョーザのことはいまだに言われます(笑)。

横田 なるほど。でもにおいが強いものが全て駄目というわけでもなかったりするので、男性側から察するのは難しいかもしれないですね。うちの妻もつわりに苦しんでいましたが、ファストフードのポテトは食べたいと言うので、私はよく買いに行っていました。

黒崎 妻は出産の痛みは忘れても、つわりのきつさは忘れられないらしく、2人目はまだ考えられないと言いますね。

妻には感謝するばかり

横田 ご自身のプレパパ期を振り返って、やっておいて良かったことは何ですか?

黒崎 ベビー用品店に行って、いろいろなミルクやオムツを見比べました。オムツは各メーカーの物を実際に買ってきて、人形を使って練習もしましたね。「なるほど、こうやって着けるのね」と独り言を言いながら。

横田 黒崎さんは自発的にやっているわけですよね。世の中の男性はあまり思い付かないと思いますよ。

黒崎 妻に言われる前にやろうと思っていました。仕事も同じですが、誰かに言われてからやると楽しくないじゃないですか。お風呂の入れ方も自分から会社の先輩たちに教わって。耳にお湯が入らないようにする方法も自主練しました。

横田 パパの細道の1stシーズンでは、「パパスイッチ」というキーワードが出てきました。女性はつわりもあるし、お腹も大きくなるので、体の変化とともにママのスイッチが入るんですが、男性は自らスイッチを入れることが大切だと思うんです。黒崎さんはいつ自分のスイッチが入ったと感じますか?

黒崎 正直なところ、例えばエコー写真を見ても、心のどこかで自分事じゃないような感じがしていたんです。本当に実感が湧いたのは、子どもが生まれた、本当にその瞬間です。

横田 それまでもいろいろな準備をされていたので、しっかり助走を取ったんだなと感じていたのですが、やっぱり顔を見て一気にスイッチが入ったんですね。

黒崎 出産に立ち会うことができなかったので、正確にはビデオ通話で子どもの顔を見せてもらった瞬間ですね。うわーって、泣いてしまいました。

横田 黒崎さんが考える、プレパパ期に最も大切なことは何でしょうか?

黒崎 とにかくママのことを一番に考えてほしいですね。男性はどれだけがんばっても、つわりのつらさや出産の痛みを共有することはできません。妻には大切な子どもを産んでくれたことに感謝するばかり。これからの人生の中で返していきたいです。

自分にできることをやっていたつもりでも、後から「他にももっとできたはず」と後悔したという黒崎さん。子どもが生まれてからでは遅い、プレパパ期だからこそできることを見つけて取り組むことが大事だと語ってくれた

(終わり)

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