「耐雪梅花麗(雪に耐えて梅花麗し)」。大学受験に落ちて浪人をしていた頃、よくノートの端っこに書いていた。当時は西郷隆盛の漢詩に由来するとは知らなかったが、今を耐えればいずれ…と、励まされる言葉だった
▼その言葉すら、かけることがはばかられる。能登半島地震で被災した受験生を思う。避難所暮らしで余震におびえ、中には家や近しい人を失った人すらいるのではないか。試験本番を迎える直前に、突然ハンディを負わされた
▼考えてみれば、そもそも大学受験がフェアとは言えない。今年も共通テスト初日の県内は雪だった。電車やバスは動くのか。雪道を受験会場に無事たどり着けるのか。無雪地域では無縁の心配事だ
▼家庭の事情や健康上の理由などで受験機会が制約されることもある。誰もが望み通りに塾や予備校に通えるわけではない。不平等へのやるせなさや不満をぐっとのみ込み、将来に関わる戦いに挑む受験生もいる
▼少子化で「大学全入時代」が訪れる。国内の大学の入学定員を総志願者数が下回り、数字上は進学希望者すべてが大学に入れるようになるとされる。現実には人気大学の倍率はそれほど下がらないだろうが、受験地獄と言われた時代と比べれば環境は大きく変わる
▼人口減少は負の側面ばかりが強調されるが、メリットだってあっていい。ほぼ一発勝負で狭き門をかいくぐることに心身をすり減らすのではなく、大学に入ってから何をし、何を得るかにこそ専心できるようになればいい。