裏金問題の温床となった派閥を解散することはけじめの一つだが、批判をかわすための解散なら安直で、問題の根っこは絶てない。

 党を挙げ、本気で政治とカネを巡る問題に取り組まなければ、政治不信の払拭は程遠い。

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けて、岸田文雄首相が18日に岸田派(宏池会)を解散する意向を示したのに続き、最大派閥の安倍派(清和政策研究会)と、二階派(志帥会)も19日、解散することを決めた。

 3派閥はいずれも、裏金事件で19日に関係者が在宅起訴または略式起訴された。

 派閥解散に踏み込まなければ、不信は払拭できないとそれぞれ判断したということだろう。

 裏金事件は安倍派が中心で、岸田首相は当初、人ごとのようにも見える対応だったが、岸田派も立件される見通しになると、率先して派閥解散へかじを切った。

 一方で、他派閥については19日も「何か申し上げる立場にない」として派閥任せにした。党総裁としての指導力を示そうとしない姿勢は違和感がある。

 裏金に関与した全ての議員に説明責任が残されている。解散後は派閥に代わって党が各議員に説明を促さねばならないが、首相の指導性のなさでは期待できない。

 岸田首相が本部長を務める政治刷新本部は、今週にも党改革の中間報告を発表する。派閥の資金集めパーティーの開催や、内閣・党役員人事での推薦を禁止するといった方針を打ち出す。

 政治資金の透明化を図ることが先決だ。パーティー券購入者の公開基準を引き下げ、政治家にも責任を負わせる公選法の連座制のような仕組みが必要だろう。政治資金規正法の改正を求めたい。

 党から党幹部個人に支出される「政策活動費」にも問題がある。使途報告が不要なつかみ金だが、2022年の政治資金収支報告書では計14億円を超え、国民感覚との乖離(かいり)が大きいからだ。

 首相は中間報告に、派閥の解消を盛り込むことも調整している。

 しかし第2派閥の麻生派(志公会)や第3派閥の茂木派(平成研究会)には存続論が強く、派閥全廃は見通せない。二階派解散を宣言した会見では二階俊博元幹事長が「別に派閥が悪かったわけでもなんでもない」とうそぶいた。

 19日には無派閥議員の有志が新たなグループを発足させた。情報共有や選挙協力の互助が目的で、裏金事件の再発防止策も議論するという。従来の派閥との違いに目を凝らしたい。

 リクルート事件を受けて党が1989年にまとめた政治改革大綱は「派閥解消の決意」を明記したが実現していない。

 今回もかけ声倒れに終わるか、刷新の名にふさわしい改革となるか、党の危機感が試される。