1993年の北海道南西沖地震で最大約30メートルの津波に襲われ、198人が犠牲になった奥尻島では、再生可能エネルギーを使った災害に強いまちづくりが進む
▼被災時は港が損傷して重油を運ぶ船が接岸できず、送電網も被害を受けて停電が数日間続いた。この経験からエネルギーの自給自足を目指し、災害時でも防災拠点への送電を確保できるようにする。地熱やバイオマス、太陽光…島には自然のエネルギーがあふれている。再エネの生産が防災に役立てば、脱炭素社会づくりと一石二鳥だ。県内では佐渡市でも、電力を地産地消する試みが動き出している
▼昨秋訪れた岡山県北部の真庭市は「再生エネ自給率100%のまち」を目標に掲げる。市の面積の約8割が森林で、豊富な木材を生かしたバイオマス発電を中心に自給率は60%を超えた。大半の公共施設は地元産の再エネを使い、重油使用と比べ電気代も削減できた
▼循環型経済の確立も目指す。生ごみやし尿などを再資源化してバイオ液肥を生産し農業に役立てる。2015年から一部地域で生ごみを回収し、実証プラントで液肥の生産を進めている
▼効率よく生産するには、ごみの分別に対する住民の協力が不可欠だ。当初は生ごみ以外の異物が12%ほど混ざっていたが、現在は1%未満になった。住民の意識は確実に高まっている
▼脱炭素を実現するには一人一人の取り組みこそが基本だと実感する。防災も同様だろう。大災害が多発する中、そんな思いをいっそう強くした。