政治とカネに対する国民の疑念を払拭し、信頼を取り戻すには、中途半端な改革案だ。さらに議論を深め、改革の実効性を高めなければならない。
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、党の政治刷新本部は23日の全体会合で党改革の中間報告案を示し、了承された。
焦点だった派閥の在り方については、全面廃止に踏み込まず、政策集団としての存続を容認した。
カネとポストの配分という派閥機能から「完全に決別する」と掲げ、政策集団に位置付ける。政治資金規正法への違反が判明した場合は、党が審査し解散や活動休止を要求できるとした。
要求に強制力はあるのかなど、詳細を詰めるべきだ。
裏金事件を巡る政治責任の在り方に結論を得るとしたが、責任内容の明記は見送った。物足りなさを感じざるを得ない。
党内6派閥のうち、東京地検特捜部に規正法違反の罪で関係者が立件された安倍派(清和政策研究会)と二階派(志帥会)、岸田派(宏池会)は解散を決めた。
誰も立件されなかった麻生派(志公会)は存続意向で、茂木派(平成研究会)も解散に慎重だ。森山派(近未来政治研究会)は情勢を注視している。
岸田文雄首相は、真っ先に岸田派解散を表明したものの、麻生太郎副総裁に対しては「麻生派は続けてもらっても構いません」と伝達したという。
第4派閥の領袖(りょうしゅう)だった首相は党内基盤が弱く、麻生氏と茂木敏充幹事長の3人で形成する「三頭政治」にひびを入れたくない判断なのだろう。
しかし、政権の命脈をつなごうとするだけで、これでは党を変える熱意に欠ける。
刷新本部の会合では「派閥を全て解消し、新しい統治の在り方を考えないと、国民の信頼は到底回復できない」との訴えもあった。首相は重く受け止めるべきだ。
改革案は政策集団による政治資金パーティーの開催や、閣僚人事などの際の推薦名簿作成、働きかけの禁止も打ち出した。
自民の国会議員が派閥に期待するのは、ポストや活動資金のほか中堅若手の教育などだ。そうした機能を派閥に代わり党が担うために、党の組織をどう変えるかも示すことが必要だ。
裏金事件を巡っては、安倍派幹部らが会見を開き説明し始めたが、裏金づくりを誰が主導したかなど全容は依然不明なままだ。秘書に任せていたとして、責任逃れをしている議員も目立つ。
改革案は、規正法違反で会計責任者が立件された場合の議員処分を盛り込んだ。当然のことだ。
野党も独自の政治改革案を示す。通常国会では、政治全体に向けられた不信を取り除くため、徹底した議論が必要だ。