自ら先頭に立って政治改革の取り組みを実行すると言うが、具体論では及び腰の姿勢が目立ち、意気込みが感じられない。岸田文雄首相の答弁は、実効性のある改革ができるのか心もとない。
国会は29日、自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、衆参両院の予算委員会で集中審議を行った。26日に通常国会が召集され、首相が施政方針演説に臨む前に集中審議を開くのは異例だ。
地震への対応や新年度予算案など喫緊の課題がある中で、「政治とカネ」の問題から審議を始めなくてはならない状況を招いたことを、自民は猛省してほしい。
岸田首相は、裏金事件について党として実態把握や説明責任を行う重要性を認め、関係議員への聞き取り調査を始めると表明した。政治的責任も党として明らかにすると言及した。
ただ、聞き取りの対象は「問題に深く関わった人」と曖昧だ。調査を終えるめどにも触れず、踏み込みが足りない。
政治資金収支報告書を訂正したのは安倍派(清和政策研究会)で30人以上、二階派(志帥会)で7人と説明したが、野党が関与を疑われる「裏金議員」の一覧を示すように要求したことには、直ちには対応しない姿勢を見せた。
野党は、聴取を受けた安倍派幹部らの参考人招致なども求めた。真相解明のためには欠かせない。
首相は「実態把握と反省と再発防止は並行して行わなければならない」などと答弁したが、実態解明が不十分なままでは再発防止ができるか疑問だ。
さらに、政治資金規正法の改正は議員立法で行われるべきだとし、与野党の議論の場が設けられれば積極的に貢献するとした。
しかし、自民政治刷新本部が先日まとめた党改革の中間報告に、会計責任者だけでなく議員が連帯責任を負う連座制導入など規正法の具体的な改正内容や、政策活動費の使途公開については触れていない。口先だけの懸念が残る。
本気で改革に取り組むのであれば、首相が議論をリードする決意を示さねばならない。
裏金事件を巡っては計10人が刑事処分を受けたものの、安倍派幹部は立件されず、会見でも「秘書に任せ切りにしていた」などと述べるだけで、自らの関与を否定する姿が目立つ。
こうした対応には、国民はもちろん、党内からも政治責任を問う声が出ている。
裏金を受けたことを認めた議員の大半が、使途を明らかにしていない。首相は使途を明確にして「説明責任」を果たすよう指示することが求められる。
裏金は使途によって脱税や詐欺罪に当たる可能性が指摘される。国民に納税を求める立場の国会議員には許されないことだ。関係議員は、重く受け止めるべきだ。
