派閥所属議員のほぼ全員が裏金を受け取りながら、誰も責任を取らずに幕引きを図るのでは筋が通らない。全容解明には程遠く、納得がいかない。
自民党安倍派(清和政策研究会)の政治資金パーティー裏金事件を受け、解散方針を決めている党最大派閥の安倍派が、最後の議員総会を開いた。
1962年に福田赳夫元首相が創設した「党風刷新連盟」を起源とし、小泉純一郎元首相ら首相を多く輩出した歴史ある派閥が、不祥事で幕を下ろす。塩谷立座長は「断腸の思いだ」と述べた。
しかし、塩谷氏や実力者「5人組」といった派閥幹部は「責任はある」と認めるものの、一人も責任を取ろうとしない。
トップの塩谷氏には派閥内から議員辞職を求める声すら上がるが、塩谷氏は「誰かが辞めて幕引きする方が問題だ」と不快感をあらわにしている。
政治とカネを巡る国民の不信感を十分理解しているように思えない。集団指導体制の無責任さが際立ち、あきれてしまう。
総会の前日、安倍派は総務省に政治資金収支報告書の2020~22年分について訂正を届け、政治資金パーティーによる収入を計4億3588万円増額した。
所属議員ら計91人が関係する政治団体への寄付支出についても計4億2700万円増額した。
安倍派の所属議員は現在96人だ。報告書の訂正は、大半の議員に裏金を還流したことを示す。
訂正を届け出た後、安倍派は「国民の政治不信を招いた」と文書で謝罪したが、詳細については「総務省のホームページをご覧ください」とするだけで、記者会見の要請も拒否した。
訂正された収支報告書には、支出の年月日に通常ではあまり見られない「10月頃~12月頃」や「不明」といった表記が並ぶ。会計責任者が起訴され、裁判になったことを理由に、再訂正する可能性も示唆している。
不明朗な内容で訂正し、会見にも応じようとしないのでは、説明責任を果たす意思がないからだと疑わざるを得ない。
東京地検特捜部が時効にかからない直近5年分を裏金事件の捜査対象にしたのに対し、訂正が政治資金規正法が収支報告書の作成と公表を義務付けている3年分にとどまったことも不十分だ。
収支報告書を訂正する動きが相次ぎ、謝罪する議員はいるものの、自身の責任や使途、派閥内の指示系統といった裏金事件の核心部分を明かす動きは見られない。
自民は2日、収支報告書に不記載があった議員への聞き取り調査を開始した。
身内による聴取が信頼に足るのか疑問だ。形式的な調査に終われば、国民の政治不信をさらに増幅させると認識するべきだ。
