外国人を単なる労働力とみなすような対応は、人権への配慮を著しく欠き、法的、倫理的に認められない。外国人労働者の人権を守る手だてが必要だ。

 技能実習生や特定技能の在留資格で働くベトナム人女性らが、来日前に採用を仲介する送り出し機関から「妊娠したら帰国」と指導されたり、日本国内の登録支援機関から妊娠を制限する指導を受けたりしていたことが分かった。

 共同通信社が在留ベトナム人を支援するNPO法人と実施したアンケートで明らかになった。

 来日前に勧められ、避妊リング装着などの処置をした人もいた。「勧められた通りにしなければ日本に行けないと思った」という。

 背景には、人手不足に悩む日本の中小零細企業が、一時的に働けない妊産婦の雇用を忌避する風潮が根強いことがある。

 しかし、労働力確保を優先する受け入れ側の事情が重んじられ、妊娠や出産を制限されることには人権上の問題が大きい。

 子どもをいつ、何人産み育てるかどうかなどを自分で決める「リプロダクティブ権」の尊重は世界的な潮流だ。

 妊娠したら退職や帰国すると指導し、避妊処置を勧めることは、自由な意思決定を阻害する。

 人権を守り、女性活躍を促す観点からも、受け入れる側が意識を変えなくてはならない。

 実習生を巡っては、妊娠で退職に追い込まれるといったマタニティーハラスメントが相次ぐ。妊娠を打ち明けられず、孤立出産したケースもある。

 出入国在留管理庁が実習生の女性を対象に行った聞き取り調査では、4分の1以上が送り出し機関などから、妊娠したら辞めてもらうと言われたという。

 母国に戻り出産後、日本で実習を再開できるが、説明を受けていないので知らないとした人は、半数を超えた。制度を正しく周知しなければならない。

 妊娠・出産を理由とする不当な扱いは、男女雇用機会均等法で禁じられており、外国人労働者も出産育児一時金、産前産後休暇、育児休業などを取得できる。

 「産休制度に対応できない企業に受け入れを認めるべきではない。産休を取らせる企業への公的な支援も検討されるべきだろう」とする識者の指摘は一理ある。

 人手不足による需要の高まりを背景に、外国人労働者は増加している。昨年10月末時点で過去最多の204万人余となり、初めて200万人の大台に乗った。

 労働現場を外国人が支える傾向は今後も強まるはずで、外国人の人権を保障する基本的な法整備を求める声もある。

 人権侵害が許されないことは外国人に対しても同じだ。あらゆる人権が守られるように社会の意識を変えていきたい。