南魚沼市の坂戸山は六日町地域の人々にとってシンボル的な存在だ。標高は弥彦山や、東京スカイツリーの高さと同じ634メートル。身近な自然を求め、真冬を除けば訪れる人が絶えない
▼市は、この山と同じ表記の埼玉県坂戸市と友好関係にある。災害時には支え合うことにしており、昨秋には大災害時に互いの出身者を受け入れる協定を結んだ。例えば首都直下地震が起きた場合は、坂戸市が市内に避難所を開設し首都圏で暮らす南魚沼の出身者を一時的に受け入れる
▼近年は、災害時に自治体の間で相互に支援する取り組みが定着してきた。その一つに「対口(たいこう)支援」がある。被災した市町村ごとに、担当の自治体を一対一で割り当てて支援を進める手法だ
▼「対口」とは、いまひとつ聞き慣れない言葉である。もともとは「適合した」「ぴったりの」という意味の中国語だそうだ。2008年の四川地震の際に中国政府が採用し、迅速な復旧につなげたとして注目を集めた
▼この手法が日本で本格的に機能したのは、18年の西日本豪雨だ。延べ約1万5千人の自治体職員が被災地に派遣された。11年の東日本大震災などと比べると、早い段階から多くの職員を派遣できるようになったという
▼ただ先月発生した能登半島地震では、初動が遅れたとの指摘がある。現地では多くの自治体職員も被災した。司令塔となる国は被害状況の把握に手間取り、素早く動けなかったようだ。今回浮上した課題に対応する策を探らねば。備えに終わりはない。