2025年大阪・関西万博に合わせて開発された、あるモノに注目している。立ち止まる人が片側に寄り、歩く人を通す「片側空け」を抑止するエスカレーターだ。発光ダイオード(LED)表示を使い、2列で立ち止まって並ぶように促す機能があるという

▼エスカレーター上で歩くと、思わぬ事故が起きかねない。業界団体は立ち止まって乗ることを呼びかけてきた。啓発ポスターを見かけた人も多いのではないか

▼しかし、今でも片側空けを日常的に見かける。呼びかけはそれほど浸透していないようだ。エスカレーターで立ち止まることを義務づける条例がある埼玉県でも、十分な効果は出ていないらしい

▼片側空けは急ぐ人への配慮という考え方もある。だが、さまざまな事情で片手しか使えない人もいる。左半身にまひがあり、安全のため右側に立って右手で手すりにつかまりたいという人もいるだろう。そうした人が無理をして左側に立っているかもしれない

▼左側に立ち、右側を空けるのが一般的な本県や首都圏と異なり、大阪では右側に立つ習慣がある。1970年の大阪万博がきっかけという説がある。世界中から人が訪れるのを前に、外国で一般的な右側立ちを普及させたというのだ。現在は米国でも片側に寄らずに立ち止まることが推奨されている

▼エスカレーターで歩かず2列で乗ることが当たり前の社会になるにはどうすればいいのか。なかなか変わらない行動様式に、技術力で挑む今回の取り組みを見守りたい。

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