火災で6人の尊い命が失われた責任の重さは、計り知れない。警察からは、安全管理上の過失があったとする判断が示された。自らの責任をどう受け止めるのか。経営トップが問われる。
三幸製菓荒川工場(村上市)で、従業員6人が死亡、1人が負傷した火災は、11日で発生から2年となった。遺族の苦しみや悔しさは、時間がいくら経過しても癒えることがない。そのことを思うと、切ない限りだ。
県警は発生2年を前に、業務上過失致死傷の疑いで、三幸製菓の佐藤元保・最高経営責任者(CEO)ら幹部4人を書類送検した。
火災は、乾燥機内の煎餅かすが発火し起きた。工場ではそれまでも同じような出火原因の火災が何度もあった。火災を予見できたにもかかわらず、清掃をこまめに行うなど煎餅かすの堆積を防ぐ対策をとらなかったとした。
従業員数が少なくなる深夜時間帯に、火災を早期に発見して消火し、避難誘導を指示する体制の整備に関しても、不備があったと指摘している。
県警は2年にわたる捜査で、同業他社からも話を聞いたという。捜査幹部は「現場よりも組織の安全管理に大きな過失がある。製菓業界へ警鐘を鳴らすべき事案だと認識し捜査した」と強調する。
業界にも大きな衝撃と緊張感を与える事態となったことを、佐藤CEOをはじめ経営陣は重く受け止めねばならない。
捜査は検察に移り、一つの区切りとなったが、愛する家族を失った遺族の怒りは変わらない。
対策を徹底していたなら、死亡事故は起きなかったと、厳しい処罰感情を持つ遺族もいる。
従業員の中には、火災による心的外傷後ストレス障害(PTSD)で、今も自宅療養を余儀なくされている人がいる。
会社は遺族や従業員たちと誠実に向き合い、謝罪と再発防止に努めていかねばならない。
経営陣の刷新を求める声が遺族から上がることも理解できる。
「トップが変わらないと会社は変わらない」「幹部4人も送検されたことを重く考え、体制を新たにしてほしい」との訴えがある。
経営陣の刷新について、佐藤CEOは、火災2年の供養式後の取材に、「捜査が継続中のため、今後の処分内容を踏まえてと考えている」と述べるにとどめたが、遺族の訴えにも経営陣は耳を傾けねばならない。
新潟労働局も、必要な防火措置をとらなかったとし、労働安全衛生法違反の疑いで、三幸製菓と佐藤CEOを書類送検した。
本県は国内トップクラスの米菓メーカーがひしめき、米菓製造は県を代表する産業の一つだ。県民の信頼を裏切ることがないように、業界全体で安全性の向上に取り組んでもらいたい。