長い間、強い成長を実現できずにきた結果が表れたものだ。構造改革を急ぎ、成長力を取り戻さなくてはならない。

 内閣府が発表した2023年の国内総生産(GDP)速報値は、経済規模をそのまま表す名目が591兆4820億円、ドル換算で4兆2106億ドルとなった。ドイツに抜かれ、米国、中国、ドイツに次ぐ世界4位となった。

 金額自体は過去最高で、増加率は5・7%と1991年以来の高い伸びだったものの、円安によりドル換算額が目減りしたほか、ドイツの物価高が日本を上回る勢いだったことも影響した。

 GDPが国民の幸福に直結するわけではないが、国際的な存在感を低下させ、資金や人材の海外流出を招く恐れがある。

 低下の根本的な原因は、日本の経済力が長期にわたって低迷していることにあるのだろう。

 日本の企業は90年代初頭のバブル経済崩壊後、金融危機を経て、リスクを取らなくなった。設備投資を極力抑えてリストラを繰り返し、デフレが長引いた。

 一方でドイツでは、90年の東西ドイツ統一後、労働市場を改革し、女性や高齢者を含めて就業者数が増えたことが成長につながったとみられている。

 深刻なのは少子高齢化を背景とした日本の人手不足だ。デフレからの完全脱却を狙う中で、日本経済の構造的な課題となっている。

 日本商工会議所が行った中小企業アンケートでは、3分の2の企業で人手が不足し、建設や運輸、介護・看護、宿泊・飲食などでは7割超に上った。

 需要が増えても労働力が足りずに対応できない事態が想定され、成長が制約される恐れがある。

 人材を確保するには、十分な賃上げが欠かせない。物価上昇のペースを上回る賃上げを実現し、個人消費を喚起できれば、成長の鍵を握る内需拡大にもつながる。

 経済成長を図るためにも、確実な賃上げを求めたい。

 潜在成長率を引き上げるため、政府は国内投資の拡大を図っている。有望分野とされる脱炭素や人工知能(AI)への投資を加速し、技術革新を促進するという。

 省力化投資やデジタル化といった生産性向上の取り組みを進めるとともに、半導体や電気自動車(EV)といった戦略分野も強化してもらいたい。

 人口規模の大きさは経済力の土台となる。2010年にGDPで日本を抜いた中国に続き、今後はインドやインドネシアが台頭し、日本の後退が見込まれている。

 人口が減る日本は国民1人当たりのGDPを増やす必要があるが、22年は先進7カ国(G7)で最下位と極めて厳しい状況だ。

 研究開発や設備投資を促進し、生産性の高い新しいビジネスモデルを構築しなくてはならない。