政権打倒を訴え続けた反政府活動家が死亡した衝撃は大きい。死の真相が闇に葬られることがあってはならない。
ロシアのプーチン政権と対立し、服役していたアレクセイ・ナワリヌイ氏が、北極圏のヤマロ・ネネツ自治管区にある刑務所で死亡した。47歳だった。
ナワリヌイ氏は、言論や集会の自由を制限して強権的支配を続けるプーチン大統領を公然と批判するカリスマ的な活動家だった。
インターネットを駆使した独自調査で政権の不正を暴き、交流サイト(SNS)などで情報を拡散した。現状に不満を抱く都市部の中間層や若者の支持を集めた。
ナワリヌイ氏側によると、ロシア当局は遺族に対し遺体の引き渡しを拒否した。遺族らが遺体安置所を訪れても、当局は入所を許可せず、死因は未特定で、調査延長を告げたという。
刑務所は永久凍土の過酷な環境下にあり、支持者や欧米諸国からは迫害で死に追いやられたとの声が出ている。真相解明が急務だ。
ナワリヌイ氏は2020年、神経剤による毒殺未遂に遭い、機中で意識を失った。
ドイツで治療を受け、21年に自ら帰国した時に逮捕され、過去の経済事件にからみ収監された。昨年は、過激派団体を創設したとして懲役19年の判決を受けた。
それでも獄中から、来月のロシア大統領選に向けてキャンペーン「プーチンなきロシア」を打ち出し、他候補への投票を訴えた。プーチン氏にとっては目障りな存在だったに違いない。
欧米諸国から非難が相次いでいる。先進7カ国(G7)は、死亡状況を「完全に解明するよう求める」との議長声明を発表した。バイデン米大統領は「間違いなくプーチン(大統領)の責任だ」とし、対抗措置を示唆した。
今回の獄中死で、改めて指摘されるのは、政権批判者の不審死や拘束が相次いでいることだ。
昨年夏、武装反乱を起こした民間軍事会社の創設者プリゴジン氏は、搭乗機墜落で死亡した。ナワリヌイ氏と接見し、メッセージを拡散した弁護士は拘束された。
大統領選では、ウクライナ侵攻反対を公言し立候補表明した人物は、中央選管に候補者登録を拒まれていた。
ただ、モスクワなど各地でナワリヌイ氏追悼の動きが自然発生的に起きており、大統領選で圧勝して今後の政権運営と侵攻継続に弾みをつけたいプーチン氏の戦略に狂いが生じる可能性もある。
許し難いのは、政権側が、献花に並んだ人々らを拘束し、市民の不満を力で抑え込む構えを見せていることだ。抗議デモへの発展を懸念しているからだろう。
当局による不当な弾圧が拡大しないように、国際社会は注視しなければならない。













