出口が見えないまま、戦いが長期に及んでいることを憂う。多くの血が流され、人命が失われる悲劇は、いつまで続くのか。ウクライナの人々に、一日も早く平穏が戻ることを願う。

 ロシアがウクライナへ侵攻し24日で2年がたった。両軍の戦死者は計19万人以上とされる。ウクライナの民間人死者は子どもを含め1万人を超えた。

 これ以上の犠牲者を出さないために国際社会は、停戦への圧力を一層強め、ロシアの暴挙を止めねばならない。

 ◆攻勢に転じたロシア

 戦況は、昨年にウクライナ軍の反転攻勢が失敗し、攻守が逆転した。兵力に勝るロシア軍が攻勢を強めている。

 ウクライナ軍にとり、戦いが3年目に入る今年は「忍耐の1年」になると言う識者もいる。

 その大きな要因は、欧米諸国の支援疲れだ。

 最大の支援国である米国は、約600億ドル(約9兆円)の支援を含む緊急予算案に、下院で多数派を擁する共和党の一部が反対している。

 ウクライナ軍は今月、約4カ月間の攻防の末、東部ドネツク州の要衝アブデーフカからの撤退を余儀なくされた。

 バイデン米大統領は、米国の支援停滞で弾薬使用が制限されたとし、「米議会の不作為の結果だ」と述べ、早急な緊急予算案可決を促した。

 ロシアは北朝鮮からのミサイルや、イランから無人機供与などの軍事協力で対応している。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は先日のミュンヘン安全保障会議で、砲弾などの不足に追い込まれたのは「人為的」とする一方で、「プーチン(大統領)は戦争の激化に適応している」と述べ、危機感を表した。

 ウクライナを支援する国々も正念場を迎えている。

 武力で侵略し領土を奪うという、国際秩序を破壊する成功の前例をつくってはならない。ウクライナ支援を自らの安全保障ととらえ、辛抱強く支援を続けてもらいたい。

 ウクライナ国内にほころびが見え始めていることも心配だ。

 ゼレンスキー氏は今月、軍トップのザルジニー軍総司令官を解任した。ロシア軍占領地の奪還が進まず、両者の確執が伝えられていた。

 ザルジニー氏は、軍内部の信望が厚かった。軍の士気が低下しないか懸念される。

 兵力をどう維持していくかも課題だ。徴兵を逃れようと国外に脱出する男性は後を絶たない。100万人の兵力のうち、約17万人が死傷したとされる。

 ゼレンスキー氏は軍から45万~50万人の追加動員を要請されている。政府は、徴兵対象年齢の引き下げや、徴兵逃れへの罰則強化を目指す新法案を議会に提出した。

 しかし、36カ月とした徴兵期間が長過ぎると反対論が拡大している。兵士たちの母親や妻たちのデモが主要都市で散発的に行われている。動員を巡る不平や不満は、社会にじわりと広がっている。

 ◆日本の技術で復興を

 日本政府が主導して19日、「日ウクライナ経済復興推進会議」を都内で開いた。地雷対策やインフラ復旧などで158億円の無償資金協力を行い、官民一体で復興を後押しする。

 憲法上の制約から、欧米のような軍事支援はできず、岸田文雄首相は「日本ならではの貢献」をアピールした。

 がれきの処理といった災害復興で培った知見や、農業やデジタル分野などでの先進的技術を大いに生かしてもらいたい。

 日本企業には、大きなビジネスチャンスになるだろう。

 ただ、ウクライナ国内は首都キーウ(キエフ)を含め、ロシアによるミサイル攻撃が続いている。現地入りは危険が伴う。

 日本政府は全土の危険情報を最高度のレベル4(退避勧告)に維持したまま、復興に関わる企業関係者のキーウ入りを特例で認めるという。

 戦火が収まり、荒廃した国土の復興へ向けた取り組みに安心し集中できるよう、日本政府は外交努力を怠ってはならない。