山を登れるのは登ろうとした者だけだ。格言めいた、こんな言葉を聞くことがある。何かを成し遂げようとする意志の大切さを説いているのだろう

▼「今年はてっぺんを目指します」。指揮官は宣言した。J1アルビレックス新潟は、きょう開幕戦を迎える。今期はタイトルという明確な目標を掲げ、リーグ戦やカップ戦に臨む

▼松橋力蔵監督の宣言は選手だけでなく、ファンやサポーターの心にも火をつけたのではないか。6年ぶりのJ1だった昨季は18チーム中10位。パスで敵の守備陣形を崩すサッカーは最高峰の舞台でも十二分に通用した

▼天皇杯準々決勝では、川崎に延長戦で勝ち越されるも土壇場で追いつく執念を見せた。PK戦により準決勝進出はならなかったが、相手の川崎がその後も勝ち進んで王座に就いただけに、タイトルは手の届くところにあると実感できた。リーグ戦では川崎に2連勝したから、なおさらだ

▼専門家の間では例年、大都市を拠点とし、財政力の豊かなチームを上位に予測する向きが目立つ。そんな中で、自らのプレースタイルを磨いた新潟が旋風を巻き起こしたら、どれほど痛快だろう。スタンドから巻き起こる「アイシテルニイガタ」の歌声を背に、躍動する選手の姿が楽しみだ

▼目標達成は生やさしいことではない。そんなことは、チームに関わる誰もが百も承知である。てっぺんに登れるのは登ろうとした者だけだ。山の頂には、どんな景色が広がっているのか。苦しくも楽しい登山の始まりだ。

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