失敗を越えて続けた挑戦が実を結んだ。宇宙開発ビジネスへの参入で前進したことを喜びたい。

 開発でしのぎを削る各国に追い付けるように、技術力をさらに磨いて競争力を高め、存在感を発揮していかなくてはならない。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が国産新型ロケット「H3」2号機の打ち上げに成功した。国産新型では1994年の「H2」以来、30年ぶりの快挙だ。

 H3は2段式の液体燃料ロケットで、現在の主力「H2A」の後継機となる。新開発したエンジンは推進力が大きく、大型の衛星を運べる。JAXAと三菱重工業が2千億円超をかけて開発した。

 昨年3月の1号機打ち上げは、2段目エンジンの点火に失敗したが、今回は正常に燃焼し、目標の軌道投入に成功した。搭載した性能確認用の模擬衛星と超小型衛星2機の分離も確認した。

 1号機の失敗では、搭載していた地球観測衛星「だいち3号」も失われた。重要な衛星までなくしていただけに、関係者の安堵(あんど)と感激はひとしおだろう。

 長岡市の長岡高専発のベンチャー企業が開発したシステムは、搭載した超小型衛星を技術面で下支えした。成功の一端を県関係者が支えたことは喜ばしい。

 米主導の国際月探査「アルテミス計画」などでの活用が期待され、力を発揮する日が待たれる。

 先月、日本で初めての月面着陸に成功した小型探査機「SLIM(スリム)」に続き、宇宙開発で大きな強みになるだろう。

 世界のロケット打ち上げは、2023年に212回と過去最多を更新した。米国が108回で突出し、そのうちイーロン・マスク氏が率いるスペースXが96回と市場を独走している。

 近年台頭が著しい中国は68回、インドは7回と回数を伸ばす。

 一方、H3の開発難航などで滞っていた日本は、22年は成功せず、04年以来の成功ゼロとなった。23年も2回にとどまった。

 課題となるのは打ち上げ費用だ。スペースXは打ち上げに使った1段目ロケットが自力で発射場に戻って再利用できる技術を持ち、大幅な低コスト化を実現した。

 H2Aは約98%の成功率を誇るものの、打ち上げに約100億円かかり、価格競争で苦戦する。

 H3は自動車部品などを活用して約50億円に抑える目標だが、スペースXに価格で対抗することは困難とみられ、中国が価格破壊をする可能性もある。コスト削減努力は避けられない。

 遅延や失敗がない姿を示し、新たな実績を築くことが大事だ。

 ただ宇宙ビジネス市場で後を追う立場の日本は、技術力だけでは太刀打ちできない。政府と民間企業が協力し、外国や民間からの受注獲得に取り組むなど総合力が求められる。