裏金の実態を明らかにし、「政治とカネ」に向けられた国民の不信を払拭する場にしなくてはならない。それには審議を完全に公開して、国民が直接説明を聞けるようにする必要がある。

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、国会は衆院政治倫理審査会を28、29日に開く方針で26日に幹事会を開いた。

 政倫審は原則非公開だが、出席者の同意で公開できる。幹事会では公開か非公開かを巡り協議した。与野党の主張の隔たりが大きく、結論は出なかった。

 自民は、「傍聴や撮影録音、会議録の閲覧は完全な非公開」との主張から譲歩し、国会議員の傍聴に限り認める案を示したものの、報道機関を含む全面公開を求める野党側と折り合わなかった。

 自民が全面公開を拒むのは、非公開を望む出席議員がいるからだ。しかし、よほど都合が悪いことでもあるのかという疑惑を増幅させる。国会議員の傍聴を認めるだけでは、国民に届きようがない。

 政倫審へ出席を申し出たのは、安倍派(清和政策研究会)の松野博一前官房長官ら事務総長経験者と、座長を務めた塩谷立元文部科学相、二階派(志帥会)の事務総長だった武田良太氏ら5人にとどまることも納得しかねる。

 野党は、還流した裏金を政治資金収支報告書に記載しなかった現職の衆院議員51人の出席を求め、本県関係議員の高鳥修一氏(比例北陸信越)と細田健一氏(旧新潟2区)も含まれる。

 説明責任に背を向けるようなあまりの消極姿勢には、自民若手からも「本気度が感じられない」との声が出ている。

 岸田文雄首相は裏金に関わった議員について「政治家として丁寧な説明を尽くすよう促したい」と述べている。指導力が問われる。

 自民は先日、議員への聞き取り調査結果を発表した。「主な使途」として15項目を挙げただけで、真相は依然はっきりしない。

 裏金の未使用者も調査対象の3割強に上った。未使用なら課税対象になるとし、野党は脱税の疑いがあると追及している。

 確定申告が始まっており、国民からは納税への不公平感も出ている。国民の信頼を取り戻すには、還流を受けた議員一人一人が説明責任を果たさねばならない。

 自民の裏金事件を強く批判していた立憲民主党でも耳を疑う事態が判明した。梅谷守衆院議員(旧新潟6区)が、選挙区内の有権者に日本酒を配っていた。公選法に違反する可能性がある。

 梅谷氏は「軽率だった」と同じ趣旨の回答を繰り返すだけで、具体的な実態を説明していない。

 これでは他党を追及する資格はない。納得のいく説明が不可欠だ。与野党を問わず、議員は国民の厳しい目が向けられていることを忘れてはならない。