政界で「やってる感」という言葉がよく使われたのは安倍政権の頃だった。「地方創生」や「1億総活躍」「女性活躍」など、看板政策を次々に打ち出し、課題に取り組む姿勢をアピールする一方、成果の方はいまひとつ。そんな意味で使われた

▼今回も「やってる感」の演出だったのか。きのう、おとといと2日間にわたった政治倫理審査会である。自民党派閥の裏金問題について、不適切な処理を問われた議員が「説明責任を果たしたい」と出席したが、実際には曖昧な弁明に終始した

▼そもそも、開催に至るまですったもんだした。国民の心証を思えば、当初からすんなり公開した方が良さそうなものだ。政倫審は原則非公開だが、本人の了解があれば公開される。当初は非公開にこだわった人がいたらしい。結局は公開されたが、それなら最初から…と思った人は多いだろう

▼公開のハードルを上げることで、厳しい環境の下で説明する姿をアピールしようとでも思ったか。そんな勘繰りの一つもしたくなる。説明責任を果たすと宣言したものの、肝心なことは「知らない」では疑惑が晴れるはずもない

▼空虚な弁明で「やってる感」を演出しても、国民は納得するはずがない。偽証の責任が問われない政倫審で真相究明が一段落するようなら、政治不信はますます高まるはずだ

▼不透明な資金の使途も明らかにしないのに、政治活動に使ったから課税対象ではないという。納税の義務も「やってる感」でごまかしていないでしょうね。

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