住宅ローンに教育ローンと歯を食いしばって借金を返す、わが身にとって投資は縁遠い。きのうは日経平均株価がとうとう4万円の大台を超えたが、わずかな恩恵も感じられない

▼年明け1月4日の大発会の終値は3万3288円29銭だった。前年末の終値から175円88銭の値下がりでスタートした。翌日の本紙は「一時700円超安 波乱の幕開け 地震の影響を懸念」と見出しを掲げた

▼元日に能登半島地震が発生し、売り注文が優勢だった。とはいえ3連休明けの9日には早くも大幅に続伸し、バブル経済期に迫る高値をつけた。地震の影響を懸念する向きは雲散霧消したかのようだった

▼その後も株価の上昇は続いてきた。投資家と日本経済にとっては喜ばしいことかもしれないが、地方で暮らす立場としては、どこか寂しさも感じてしまう。「人口減少が深刻な地方で大きな災害が起きているのに、日本経済への影響は微々たるものなのかな」。そんな思いが頭をよぎる

▼地震の発生から2カ月、株価と被災地の状況はあまりに対照的だ。能登半島はもちろん本県でも、生活再建の見通しすら立てられない被災者は多い。地震の影響に苦しむ事業所も目立つ。株式市場の好調は遠い世界の話としか思えない人も多いはずだ

▼社会の分断の深まりが指摘されるようになって久しい。中央と地方、正規と非正規、富裕層と貧困層…。株価の勢いが経済を活性化させ、広く等しく底上げすることを願う。バブルのようにはじけないことも。

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