高齢による衰えが懸念される現職と、法廷闘争を抱えた前職が再び激突する可能性が高まった。米国の多様な民意をまとめていける候補者なのか疑問を覚える。

 11月の米大統領選に向けた共和、民主両党の候補指名争いは5日、州の予備選などが集中するスーパーチューズデーとなった。

 共和党は、「米国第一主義」を掲げるトランプ前大統領が、ヘイリー元国連大使に圧勝し、指名獲得を確実にした。

 民主党は、再選を目指すバイデン大統領が各州で圧勝した。本選はトランプ氏とバイデン氏による再対決の構図が事実上固まった。

 今のところ全米での支持率は、トランプ氏がわずかにバイデン氏をリードしている。

 背景にはバイデン氏がイスラム組織ハマスの奇襲を受けたイスラエルを支持し、報復を容認してきたことがある。報復攻撃で多くの民間人が犠牲になり、米国のアラブ系市民や若者の離反を招いた。

 一方、熱狂的な支持勢力を持つトランプ氏は、国際協調路線には背を向け、不法移民政策などで民主党政権を徹底批判してきた。

 トランプ氏が圧倒的な支持を集めたのは、共和党の内向き志向の表れと見ていいだろう。

 共和党政権に戻れば、ウクライナ支援をはじめとする外交姿勢が大転換する可能性がある。

 トランプ氏については、2021年の議会襲撃事件に関与、反乱したとして、西部コロラド州最高裁が出馬資格を剝奪する判決を示していたが、連邦最高裁がこれを覆し、出馬資格が認められた。

 ただ、このほかにも複数の訴訟を抱えている。

 共和党内にはトランプ氏が意に沿わない幹部を排除し、親族とすげ替えようとする動きがある。

 選挙の資金集めを調整する党全国委員会のトップに親族を就ける画策をしているのも、巨額の訴訟費用を党予算から捻出する目的があるとみられる。党を私物化しようとする動きが目に余る。

 81歳のバイデン氏は、米史上最高齢の現職として再選を目指す。

 ホワイトハウスは、職務遂行に問題はないとする医師の診断書を公表したが、体力や記憶力の衰えが懸念されている。

 米紙の世論調査によると、国民の7割以上が、バイデン氏について「大統領を務めるには年を取りすぎている」と回答したという。支持者の間でも高齢不安が広がっている。状況は深刻といえる。

 トランプ氏も4年後には現在のバイデン氏と同じ81歳になる。

 米調査会社によると、米国の成人の6割超が「第3の政党が必要だ」と答えている。民主、共和両党以外の選択肢を望む声が多いのは、両党が民意を代弁できていないという考えによるものだ。

 分断が深まる中でかじ取りを任せられるリーダーが求められる。