変化の兆しは見えている。必要なのは、あらゆる分野で改革を加速し、平等な世界の実現につなげていくことだ。

 社会の半分は女性が支える。女性の権利が守られ、地位が確立されることは、誰もが生きやすい社会の基盤になる。格差解消を急がねばならない。

 国連は、3月8日を「国際女性デー」とし、女性の地位向上や差別撤廃を目指して行動する日と位置付けている。

 男女平等度を示す世界経済フォーラムの「男女格差(ジェンダー・ギャップ)報告」で、日本は調査対象の146カ国中125位で、先進7カ国(G7)、東アジア・太平洋地域で最下位だった。

 特に国会議員や大臣の男女比などから算出する政治分野と、管理職の比率や賃金差などから算出する経済分野が低い。

 変化の兆候はある。日本の研究者らでつくる「地域からジェンダー平等研究会」が公表した都道府県別の指数で、政治分野の数値が全都道府県で上昇した。昨春の統一地方選で女性が躍進したことが影響したとみられる。

 本県は全国10位だった。だが「1」に近いほど平等なことを示す指数で見れば0・219で、男女格差は依然、大きい。

 現職議員は男性が多く、選挙の立候補で現職が優先される現状が女性の進出を阻んでいる。

 議席や候補者の一定数を女性に割り当てる「クオータ制」導入を望む声があるのは、格差が解消されない危機感が強いからだ。

 経済面では、企業や団体のトップを女性が務めるケースが増えてきた。日本航空では客室乗務員出身者が社長に、日弁連でも検察官、裁判官を加えた法曹三者の中で初めてトップに就く。

 意思決定の場に女性が増えれば、多様な視点が取り入れられ、社会に変化が起きるだろう。

 しかし、英誌が発表した女性の働きやすさランキングで、日本は先進国を中心とした29カ国のうち27位にとどまった。

 給与水準の男女格差と企業の役員に占める女性の割合は改善してきたが、企業の管理職に占める女性の割合は2023年に14・6%で、最下位のままだった。

 英誌は日本について、女性が「依然として職場で最大の障害に直面している」と指摘している。

 管理職の割合で男女差が大きいのは行政も同じだ。女性管理職を増やすには、人事慣行や育成過程の変革が必要で、時間がかかる。先を見据えて取り組みたい。

 8日には選択的夫婦別姓の早期実現を求め、企業経営者らが政府に署名と要望書を提出した。女性の社会進出に伴って、制度の不合理が浮き彫りになって久しい。

 家族の在り方や国民の意識は変化している。現代に適した制度を本気で考えるべきではないか。