子どもをほしがらない若者が増えている。ロート製薬が昨年実施した調査によると、18~29歳の未婚男女のうち、子どもを望まないと答えた割合は55・2%に上った
▼同様の設問を開始して以来上昇が続き、4年目となる今回は初めて半数を超えた。この間の上昇幅は11ポイント余りになる。こうした意識の広がりは何となく想像できたが、いざ数字を目にするとため息が出る。少子化対策は必要と思いながらも諦めに包まれそうになる
▼諦めるという行為について僧侶の名取芳彦(ほうげん)さんが著書で解説している。「諦」という字を漢和辞典で引くと、意味の解説に「つまびらかにする、注意してよく見る」「よくわかる。理解する」とある
▼諦めるという行為は本来、何かを断念する前に状況をよく見極めて理解することがまず必要なのだという。本質をつかめれば、きっぱりと諦められるし、新たな道も見つかるというものだろう
▼ならば少子化対策を諦める前に、子どもを望まない若者の心理をきちんと理解せねばならない。低賃金にあえぎ、子どもを授かっても周囲の協力を得られない。そんな実情を中途半端にしか理解しなければ、小手先の対策しか打てないはずだ
▼前述の調査では子どもを望まない女性について、考えが変わったときに「授かれる可能性を残しておきたい」とする回答も25%ほどあった。状況さえ変われば、子どもをもうけてもいいということだろう。簡単に諦めそうになった自分を反省しつつ思う。若者に目を凝らさねば。