原本と同じように写し取る。コピーは機械を使う方法のほか、手書き伝票などで複写紙を使うやり方がある。筆圧によって、2枚目以降の紙にも1枚目と同じ文字が記される。かつては紙と紙の間にカーボン紙を挟むこともよくあった

▼事務仕事では長く必需品だったが、コピー機の普及でその姿を見る機会はずいぶん減った。それでも、カーボンコピーという用語は現在もよく使われる。比喩的に「模倣」「丸写し」など、負のニュアンスをまとわせて使われることが多い

▼よく知られるのは参院についてだ。衆院の決定を追認するばかりだとして「衆院のカーボンコピー」と揶揄(やゆ)されることがある。やはりそうかと思わされた。参院できのう初めて開かれた政治倫理審査会である

▼自民党安倍派の資金還流が復活した経緯について、派閥幹部は「知らない」と繰り返した。問題の核心部分を知らぬ存ぜぬで押し通すのは、先ごろ衆院で政倫審が開かれた際と同様だった。コピーのように同じ弁明が繰り返された。衆院側と口裏を合わせたのかと勘ぐりたくなる

▼国民の政治不信を増幅する結果を招くのも同じだろう。知らなかったというなら調べようとはしなかったのか。責任の所在を明らかにすることで、政治不信の払拭を計ろうとは思わなかったのか

▼きのうの政倫審では安倍派に所属した議員が、派閥幹部の説明責任について「全く果たされていない」と発言する一幕もあった。カーボンコピーの逃げ口上は政治不信を深めるだけだ。

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