本県の桜開花はいつになるだろう。青空の下で咲く花は鮮やかだが、この季節は曇り空も多い。いわゆる「花曇り」だ。これはこれで落ち着いた風情がある
▼花曇りは桜の咲くころに多い薄曇りの空を指す。春の季語であり、文学的な表現だ。一方で「薄曇り」は、れっきとした気象用語である。空全体の雲の量が9割以上で雨が降っていなければ「曇り」という。このうち見かけ上、上層の雲が中・下層の雲より多い状態を「薄曇り」と呼ぶ。気象庁のウェブサイトが説明している
▼新潟地方気象台では、前身時代から約140年にわたって続けてきた目視による観測を、きょうからレーダーや気象衛星を活用した自動観測に変更する。これに伴って「薄曇り」や「快晴」といった詳細な天気や、虹や吹雪など約40種の大気現象の観測を終えるという
▼観測の自動化は2019年から全国の気象台で順次進められてきた。東京の気象庁と大阪の気象台ではデータ精度の検証のため目視も併用するが、新潟や名古屋など9気象台がきょう切り替わることで、全気象台が自動観測になる
▼新潟地方気象台では職員が午前0時を除き、午前3時から3時間おきに1日7回、屋上で観測してきた。目視観測は多様な気象現象に精通している必要があり、負担も大きかっただろう
▼時代の流れとはいえ「薄曇り」などの表現が消えていくのはさみしい。はやりの人工知能を使えば、目視と同様の観測もできるのでは。そんな日が来ることはないだろうか。