外国を「海の外」、すなわち「海外」と呼ぶのは世界の中でも少数派だろう。多くの国は地続きで隣国と接する。日本語の「海外」は、わが国が四方を海に囲まれていることの表れだ

▼それゆえに、外国から伝わった文化やモノは多くが海を越えてやってきた。漢字や仏教は大陸から伝来した。ネギやハクサイなど元をたどれば外国原産の野菜も多い。逆に日本から外国に伝わったケースもあるだろう。島国日本は海を経由して多種多様なものをやり取りしてきた

▼その中には災害までも含まれる。きのう午前、台湾で発生した大地震の影響で沖縄周辺に津波警報が出され、実際に潮位の変化が観測された。沖縄での最大震度は4だったが、津波は海を伝わって与那国島や宮古島に到達した

▼甚大な被害が発生したこともある。1960年、南米のチリで起きた巨大地震により発生した津波は太平洋側の各地に到達した。東北を中心に死者・行方不明者は142人に上った。「チリ地震津波」の名前でよく知られている

▼本県も、能登半島地震の津波で被害が出たことは記憶に新しい。遠くで起きた地震でも、津波が襲来する可能性はある。素早い避難をはじめ、命を守る心構えを再確認したい

▼今回の津波を引き起こした大地震は、震源に近い台湾に大きな被害をもたらした。現地からの映像を見ると、能登の被災地の惨状を思い起こす。能登での地震の際は、台湾から多額の善意が寄せられた。海を越え、今度はこちらから支援を届けたい。

朗読日報抄とは?