風雪や落石に長年耐えてきたことを思わせる糸魚川真柏。急斜面のわずかな岩棚にしぶとく根を張る姿は、たくましさと緊張感がみなぎる。上下70センチ、左右70センチ

 糸魚川市には二つの宝があるという。

 一つは、古来より人々に珍重され、装身具などに利用されてきた宝石のヒスイ。さて、もう一つは?

 「盆栽の王」として、愛好家のあこがれの的となっている「糸魚川真柏(しんぱく)」だ。盆栽の中でも真柏は人気が高く、特に糸魚川真柏は、葉の性質である「葉性(はしょう)」が繊細かつ緻密、葉色も鮮やかで、他の自生地と差別化されブランド化している。

 険しい岩山の斜面に生き、長年の風雪や落石でねじれた幹、枯れて木質部が白骨のように残った幹「シャリ」と枝「ジン」が、奥深い世界を生み出している。真柏の名品を前にした人は、目の前から吹き付けてくる風を感じ、思わずかぶっていた帽子を手で...

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