
新潟市秋葉区小須戸地区の特産品として、大正期には約200軒の業者が生産し、県内外に出荷されていた木綿織物「小須戸縞(じま)」。時代の流れと共に衰退し、最後の職人だった長井利夫さんが2023年に87歳で他界したことで、工業製品としての歴史は途絶えた。しかし地域の暮らしを支えてきた歴史と技術を次世代に残そうと、障害者施設が手織りでの生産に乗り出したり、博物館が資料を収集したりしている。一つ一つの動きは細くても、それぞれが小須戸縞を長く紡ごうとしている。
(報道部・計良草太)
手織りの技術を買われ…福祉事業所の利用者が“後継”に
新潟市秋葉区「ほほえみほのか」小川陽子さん
トン、トン、トン。新潟市秋葉区矢代田の障害福祉サービス事業所「ほほえみほのか」で、利用者の小川陽子さん(35)が、リズミカルに手織り機を操る。紺やピンク、白といった無数の縦糸と横糸をがっちりと固め、1反(約37センチ)幅の小須戸縞の生地を生み出す。
小須戸縞を織り始めたのは...
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