自分から進んで選挙に立候補するのはおこがましいと尻込みした。地域の有力者に難色を示された。立候補すれば注目されるため家族や親族に反対された-。思い当たる方もいるだろうか
▼暮らしに身近な存在であるはずの地方議会で、議員のなり手不足が大きな課題になっている。全国町村議会議長会の検討会が先ごろまとめた報告書は、この問題の背景に先述のような心理や事情があると指摘している
▼報告書によると、民間企業の定年引き上げで、リタイア後に議員を引き受ける気力や体力が残っていないケースもある。選挙戦で地域が分断されるのを防ぐためとして、あえて無投票になるよう立候補者を調整することもある
▼首長や役所の仕事をチェックし、住民の声を施政に反映させる。議会のこうした役割が大切なのは言うまでもない。ただ現実には、選挙に出るとなれば大きな壁を乗り越えなければならない
▼上越、村上の市議選と阿賀野市議補選は選挙戦が展開されている。佐渡では新市議の顔ぶれが決まった。いずれも定員割れや無投票にはならなかった。壁を乗り越え、立候補にこぎ着けた人もいるのだろう。一方で、壁を前に断念した人がいたかもしれない
▼議会が住民の声を反映していないと指摘されることがある。それは、有権者が地域の実情に即した顔ぶれを議会に送り出せていないことを意味する。住民本位の自治を実現するには、出馬の壁をなくしていく必要もあるだろう。問われるのは私たち有権者である。