能登半島地震は、原発の防災対策への疑問を改めて突きつけた。原発の安全性議論の土台となる地震研究は、どこまで深まっているのか。原発の設備や、事故時の住民避難の態勢は十分なのか。長期企画「誰のための原発か 新潟から問う」の今シリーズでは、自然の脅威が浮き彫りにした課題を検証する。(7回続きの6)=敬称略=

 海から吹き付ける風の中で、ひたすら寒さをこらえるしかなかった。

 能登半島地震が起きた2024年1月1日。新潟県内沿岸部に出された津波警報を受け、佐渡市松ケ崎の菊池高根(60)は集落の背後にある高台へ逃れた。雨風をしのげ、暖のとれる建物はない。他の住民とともに海を見つめながら、警報が解除されるのを待った。

 「地震や津波に原発事故が重なったら、どうすればいいのか」。元日の様子を振り返り、菊池は表情を曇らせる。

 海に...

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