能登半島地震で被害が広がった新潟市西区の拙宅周辺は街路や歩道に無数のひび割れが残る。そのわずかな割れ目では、濃淡さまざまな草花が伸び盛りである

▼オランダミミナグサは米粒ほどの白花を咲かせている。ツクシの茎というスギナも針のような青い芽を競って伸ばす。ヨモギ、タンポポ、ヨシ…。地震からまだ4カ月ほどなのに、アスファルトの隙間は雑多な草で春らんまんだ

▼あらためて雑草の生命力に驚く。農業や園芸では一番の嫌われ者だ。でも、みちくさ研究家を自称する植物学者の稲垣栄洋さんは著書「生き物の死にざま」などで「最も進化した植物」だと彼らのけなげでしたたかな延命の術をたたえる

▼共通するのは予測不能な逆境をチャンスに変える個性である。地をはうように生えるカタバミは人が摘み取ると、その刺激でパチパチと種子が散らばり衣服にくっつく。オオバコは靴や車輪に踏まれると、待ってましたとばかりに種を付着させる。どちらも別天地で子孫を残す作戦である

▼先の地震被害を調査した新潟大の地質学者は、西区では液状化が比較的浅い層で起きていた点に着目。地下水位を2~3メートル下げるなどすれば、液状化被害を防ぐ効果が見込めると提言した

▼戸別に対応するより街区単位なら、地下水を抜くのも効率的だろう。一方で素人考えでは、地盤沈下が起こらないか心配にもなる。研究者も行政も懸命な模索が続きそうだ。逆境転じて、子孫繁栄に生かす。たくましい雑草魂から学びたい。

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