昨年度、県内の民間事業所で育児休業を取った男性の割合は過去最高の33・7%だった。調査した県によると、2010~19年度は1~5%台で推移していたが、20年度から大きく伸びた
▼労使双方の意識が高まったり、ウイルス禍で働き方が変わったりしたことが背景にあるようだ。育休を取る男性が増えたのは喜ばしい。一方で気になる点もあった。この調査では、取得した期間は尋ねていない。極端な話、1日でも休めば取得したとカウントされる
▼「取るだけ育休」という言葉がある。ほんの数日休んだだけで育児という本来の目的を十分に果たしていなかったり、家事はさして担わず、かえって女性の負担を増やしたりすることを指すようだ
▼共同通信が主要企業を対象に昨年実施したアンケートによると、取得した育休期間は男性が「1カ月~3カ月未満」が47%と最多で「5日~2週間未満」との回答も13%あった。女性は「12カ月~18カ月未満」が51%で「6カ月~12カ月未満」が27%だった。取得期間は男女で大きな開きがあった
▼男女を問わず、誰もが取得しやすい環境が必要だ。三井住友海上火災保険は、育休を取った社員と同じ職場で働く同僚に手当を出す制度を導入した。誰かが休むと負担が増す同僚に報いるためという。長期の育休が取りやすくなりそうだ
▼余裕のある大企業だからという側面はあろう。だが、せっかく休んでも育児の実態が伴わねば、出生率の向上など到底おぼつかない。知恵を絞らなければ。