ロシアによるウクライナ侵攻で多くの市民の命が失われている。犠牲を増やさぬために一日も早い停戦合意を望みたい。

 一方で情勢の緊迫化が及ぼす国内経済への影響も見逃せない。国際社会がロシアに経済制裁を科し、エネルギーや食品を中心に物価上昇が避けられない中、政府は経済や暮らしへの打撃を抑えられるかが問われる。

 情勢緊迫化により、ウイルス禍からの経済回復を背景とした需要増で長引いていた原油価格の高騰に拍車が掛かっている。

 14日時点のレギュラーガソリンの全国平均小売価格は1リットル当たり175円20銭と、10週連続で値上がりした。

 政府は激変緩和措置として、ガソリンの国内平均価格を172円に抑えるように石油元売り会社へ支給する補助金を、17日から上限の1リットル当たり25円ちょうどに引き上げた。

 ただ、原油価格がさらに高値で推移すれば補助金では吸収できなくなる恐れがある。原油高は既に生産や流通、発電といった幅広い経済活動に影響し、県内企業からは「コスト削減努力は限界だ」との声が漏れる。

 マイカーの保有台数が多く寒冷地でもある本県では、車の燃料費や家庭の暖房費にも跳ね返っている。

 政府は2022年度予算成立後に燃油価格高騰対策を柱とした経済対策をまとめる構えで、ガソリン税の一部を減税する「トリガー条項」の発動も視野に調整している。

 ただ発動には関連法改正などが必要で時間がかかるとみられる。緊急的な対応と長期的な戦略を組み合わせ、国民生活を支える対策を示してもらいたい。

 食品価格も高騰している。中でもロシアとウクライナが一大産地で、輸入への依存が大きい小麦の値上がりが深刻だ。

 日本は9割を輸入に頼る。調達先は米国やカナダだが、供給不安で国際相場が上がり、買い付け価格を押し上げた。

 22年4月期(4~9月)の製粉会社への輸入小麦の売り渡し価格は北米の不作が国際相場を押し上げたことで17・3%上昇するが、半年後にはさらにウクライナ情勢を踏まえた高騰が見通されるという。

 小売業者は仕入価格や燃料費の上昇で経営を大きく圧迫されており、価格転嫁せざるを得ない状況だ。パンや麺類の値上げは避けられそうにない。

 専門家の分析では、前回小麦価格が高騰した07~08年には勤労者世帯の食料費が1万9千円増えたと試算され、今回はそれ以上の圧迫となる恐れがある。

 ウイルス禍で収入が減った世帯は多く、疲弊した状況は続いている。物価上昇のあおりで再び窮地に立たされることがないようにしたい。

 政府はロシアへの経済制裁をさらに拡大し、貿易上の優遇措置である「最恵国待遇」を撤回した。カニなどロシアからの輸入品の関税が上がるため、値上がりが想定されている。

 影響はどこまで広がるのか。警戒を緩めずにいたい。