本県の活力を高めるには、県内で働こうと志す若者を増やすことが欠かせない。官民が連携して、県内企業や新潟で働く魅力をアピールしていきたい。
2025年春に卒業する大学生らの就職活動が佳境に入っている。人手不足で求職者に優位な「売り手市場」が続く中、優秀な人材獲得を目指し、選考を進めている企業は多い。
新潟日報社が県内主要企業に行った新卒採用アンケートでは、24年春実績と比べて採用を増やすという回答が4割を超えた。インターンシップ(就業体験)の強化や採用作業の前倒しといった対策を講じている。
就職情報サイトを運営する企業によると、25年卒業予定の大学生の就職内定率は4月1日時点で58%を超え、選考の早期化が鮮明になっている。
気になるのは、県内の大学・短大の卒業者が県内企業に就職する割合が低下していることだ。
新潟労働局によると、今春卒業者の就職内定率は2月末時点で93・0%と過去最高水準だった。
しかし県内企業から内定を得た割合は54・6%で、前年同月と比べ0・4ポイント下がり、2年連続で低下した。高卒は4年ぶりに低下し、2・8ポイント減の85・9%だった。
新型コロナウイルス禍で県境を越えた移動が控えられ、一時は上がった県内企業の内定率が、再び低下傾向に入った。
要因の一つには、賃金面の格差がある。厚生労働省の調査では、フルタイムで働く人の23年の平均月給は本県は27万200円で、都道府県別で35位だった。1位の東京の36万8500円、全国平均31万8300円との開きも大きい。
賃金は就職先を決める上で重要な要素だ。県内は中小企業が多く環境は厳しいが、初任給の引き上げなど若者の所得を増やすための工夫が経営者には求められる。
本県には、首都圏に比べ家賃が安く、生活費も割安で、通勤時間も短くて済むといったメリットもある。仕事と私生活のバランスがとれた働き方がしやすい点を魅力に感じる若者も多いはずだ。
本県は、男性の育休取得率が全国平均より高く、22年度は27・7%と10ポイント以上も上回った。23年度は33・7%と過去最高になった。
若者や子育て世代にこうした点をアピールするのも有効だろう。
学生の就職志望先では、賃金が高い首都圏の企業や知名度の高い大企業などが挙がりがちだ。
ただ、本県には食品産業をはじめ魅力的な企業は数多くあり、世界で活躍する社もある。ニットや金属加工などの地場産業も多い。
官民が連携し、それぞれの特色を県内外に広く発信し、理解を広めていくことが大切だ。
最近は県内から県外に本社を移す企業が増えているとの調査もある。負の循環に陥らぬよう危機感を持って対応したい。
人口減に歯止めをかけ、若者を増やすには、魅力ある働く場がきちんと用意されていることが何よりも重要になる。