新発田市の女性が本紙窓欄に寄せた投稿にほっこりした。小学生だった息子に手作りの笹団子をねだられたという。作れないと答えると「お母さんは日頃言ってる。調べたり人に尋ねたりもしないでできないと言うのは、初めからやる気がないからだ」と返された。なかなか手ごわい

▼児童文学作家の故・灰谷健次郎さんの著作には、大人の不用意なあしらいに痛烈なしっぺ返しを食らわせる子どもの詩が度々登場する。そこには子どもの人格とくすみない感受性への敬意が感じられる

▼灰谷さんはある少年事件に寄せて、厳罰化は一見正しくもあるが積極的に支持する人間には「怠け者が多い」と看破した。事件に至る背景や取り巻く環境に目を凝らす行為の積み重ねが、社会を浄化すると訴えた。子どもと向き合う手間を惜しむな、とも読み取れる

▼子どもが考えるのを待たずに大人が教えてしまったり、手を出してしまったりしていないだろうか。灰谷さんは「大人が子どもの領分を無意識におかしているうちに、子どもそのものが見えなくなってしまっている」ともつづる

▼きょうは「こどもの日」。祝日法は、子どもの人格を重んじることをうたう。きっと難しく考えなくてもいい。自分を尊重してほしいと大人が思うように、そのまま子どもに接すればいい

▼冒頭の女性は息子の「見事な返し」を受けた後、笹団子の作り方を一から学んでマスターしたという。言い訳もごまかしもしなかったその姿勢を、お手本にさせていただく。

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